小説の中に転生する前は、僕は唯の高校3年生
そして、卒業式がある日だった
いつもよりも早く起きて、好きな小説を読んで学校に行く時間になるまで、ずっと家にいた
そんな時、ある展開の場所を見ていた時だった
「次は……次は……幸せになれますように」
悪役令息は、そう願った
『刑を執行せよ!』
そして、悪役令息は絶えたのである
好きなキャラクターでもあった悪役令息が絶えた場面を見て文句を言いながら窓の外を見た時
朝は見えないはずの星が、金色に光り輝いた気がした
見間違いかと思い、目を擦る
その次だった
急に、目の前いっぱいに光が走った
身動きも取れなくなっている僕を、光が包み込んで
最後には、光に飲まれ、部屋の中には誰一人いなくなった
それが、僕の転生する前の話
今では……
絶賛五歳児になっています
五歳児だと分かったのは、昨日が誕生日だったからだ
とても盛大に行われていたのをよく覚えている
問題は、どんな世界に来たか、だ
僕の好きな小説ではないことは確かだ
「どうするものか」、と考えていると
大きめの姿見を発見、あれなら容姿がわかるだろう
慣れない足取りで姿見へと向かう
姿見には、白い髪にピンク色の瞳を持つ少年が移っていた
そう、その容姿はまるで……
僕の大好きな小説の、悪役令息だった
これで、はっきりした
僕は
小説の中に転生してしまったようだ
友よ、ごめん
卒業式にはいけないかもしれない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。