第5話

恥の多い生涯を送ってきました
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2026/01/25 11:34 更新
カランカラン
マスター
いらっしゃい
弦巻響
どうも
太宰治
マスター、知り合いかい?
マスター
アルバイトですよ
マスター
月に1回この子が歌うイベントがあるんです
マスター
ちょうどその日ですけど…太宰くんしかいません
彼に向けた歌を歌ってはどうですか
弦巻響
はい、えっと
太宰治
太宰治だよ
弦巻響
分かりました、それではー
弦巻響
スゥ、出来るだけ嘘はないように
どんな時も優しくあれるように
人が痛みを感じた時には
自分の事のように思えるように
弦巻響
正しさを別の正しさで
無くす悲しみにも出会うけれど
弦巻響
水平線が光る朝に
あなたの希望が崩れ落ちて
風に飛ばされる欠片に
誰かが綺麗と呟いてる
悲しい声で歌いながら
いつしか海に流れ着いて
光って
弦巻響
自分の背中は見えないのだから
恥ずかしがらず人に尋ねるといい
心は誰にも見えないのだから
見えるものよりも大事にするといい
弦巻響
毎日が重なることで
会えなくなる人も出来るけれど
太宰治
ッッッ!
弦巻響
透き通るほど淡い夜に
あなたの夢がひとつ叶って
歓声と拍手の中に
誰かの悲鳴が隠れている
耐える理由を探しながら
いくつも答えを抱えながら
悩んで
あなたは自分を知るでしょう
太宰治
ヒュッ
弦巻響
誰の心に残ることも
目に焼き付くこともない今日も
雑音と足音の奥で
弦巻響
私はここだと叫んでいる
弦巻響
水平線が光る朝に
あなたの希望が崩れ落ちて
風に飛ばされる欠片に
誰かが綺麗と呟いてる
哀しい声で歌いながら
いつしか海に流れ着いて
光って
あなたはそれを見るでしょう
弦巻響
あなたはそれを見るでしょう
パチパチ
マスター
上手ですね
太宰治
ッ全く、綺麗なようで泥臭い
嫌な歌だ
生きることに希望を持たせようとしてくる
太宰治
捻くれた私には耳が痛いよ
太宰治
昔の誰かと似ている
弦巻響
なんて言いました?
太宰治
いや、なんでも
ねえ、一緒に飲もうじゃないか
弦巻響
はい
その目に、少しの灯りと、眩しい物が光っていたのは、
知る由もないー

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