第17話

刺青店の親父の話
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2022/11/01 23:13 更新




ここはある港町の
小さく店を構えるタトゥースタジオ。



島の物好きが
たまにやってきて刺青を彫っていくが、
大体は漁師や賞金稼ぎ。


あとは
どこからか噂を聞きつけてやってくる海賊なんかが
ほとんどだった。




ある日、
カランカラン…と
店のベルを鳴らしながら入ってきたのは、
鍛え上げられた体にシャツ一枚羽織って、
ハーフパンツ姿といった風貌の青年だった。


頭にはテンガロンハット。
首紐にはドクロを模した装飾がついている。



青年はその帽子を少し傾けて、笑顔で言い放つ。


青年『暗いし店小さくて分かりにくいな!!』


彫り師『うるせーよ!!』



入店の第一声に失礼な事を言い放つ青年は、

…なんとも人懐こそうな顔で笑う若者だった。






青年『おやっさん!
彫って貰いたいもんがあるんだ!』





彫り師『ん?あんちゃん見ねェ顔だな
いいぜ、どういうのだ?』





青年『これなんだが…』






青年は小さな紙に書いた文字を
照れ臭そうに頭を掻きながら手渡してくる。






彫り師『ん?自分のイニシャルか?』





青年『や、おれのではねェんだが…』





彫り師『ははーん?さてはコレかい?』



小指を立ててからかってみれば、
また照れ臭そうに頭をかきながら青年は答えた。



青年『ははは!!…まぁ、そんな所だ!
おれの命よりも大事なヤツなんだ。


…守ってやりてェ。』





青年はそう言って笑う。





彫り師『いいねェ若いってのは!!

刺青ってーのは
そういう大事なもんを彫るもんだからな
いや!検索して悪かった!』





青年『いや、いいんだ!
ただ、彫る場所をまだ決めてなくてよ…』





彫り師『刺青は入れる場所なんかで
意味があるんだ!

恋人なんだったら、
心臓に近い場所に入れたりするが……』



青年『本当は…
目立つところに入れたいんだがな…』



彫り師『うん?』


男の反応を見ると、少し照れ臭そうにするので、別の場所を提案する。



彫り師『じゃあ、耳の後ろなんかどうだ?』


青年『そこはどんな意味があるんだ?』


彫り師『んーそうだなー。

耳の後ろは、人の内面を表す場所とされてるが…

まぁ、自分の大事にしてるもんだったりを入れたりすることが多いみてェだな!』



青年『内面…か…』





そう言ってやると青年は目を輝かせながら笑った。



青年『決めた!そこにする!!』



彫り師『じゃあそこに座ってくれ』


青年『おれよくわかんねーけど
こういう単純なのって難しいんだろ?』



彫り師『ん、いや
俺ならすぐに入れてやれるから安心しな』



青年『ありがてェ!
もうじき仲間達と落ち合う約束なんだ』





彫り師『仲間…?

ああ、あんちゃん、海賊だったのかい』





青年『まぁな!』







彫り終わると、青年は代金を支払い終え



『おっちゃん、いい腕だな!噂通りだったぜ!』


と言って、片手を上げながら歩き出す。




 

…すると


青年は何かを思い出したかの様に
店の扉から出かかった体にブレーキをかけて
顔をこちらに向けた。





青年『おっちゃん、俺が言うのもなんだけどよ!
こんなこじんまりとじゃなくて
港にでっかく店構えたらいいじゃねェか!

腕いいんだしよ!』



彫り師『…?そうか?』




青年『ああ!絶対そうさ!俺の勘は当たるんだ!』


彫り師『分かったぜ、考えとく!
早く仲間と合流してやんな!
待たせてるんだろう?』


青年『やべェ!そうだった!!
ありがとな!!』




と言って満面の笑みで今度こそ去って行った。




彫り師『ふっ…』


彫り師『あんな海賊が、まだいたんだな』





見送った青年の背中を見て、
ふと懐かしさが込み上げた。


あれは確か…20年前だったか。



この島で店を始める前の話だ。



俺は旅をしていて、
いろんな場所を点々としてた時の事だ。





おれは当時、人と違う事がしてみたくて、

政府が発行した新聞なんて
ろくに目も通さなかったもんだから
当時は何もわからなかったが…


偶然立ち寄った島の酒場で出会ったのは
立派な髭をこさえた男だった。



酒もいい具合に回って、お互い話すうちに
そいつは海賊の船長という事が分かった。


俺の店を持ちたいという話しを聞いて、
バンバンと力強く俺の背中を叩くと
豪快に笑いながら言った。



男『なんだオメー!
店出す勇気がなくて旅してんのか!!
度胸があるのか無ェのか分かんねェな!!
ワッハッハッハ!!』


『うるせー!
海賊の船長なのに、
はぐれて飲んだくれてる奴に
笑われたかねーよ!!』


男『違ェねェ!!!ガッハッハ!!』


『…ったく
ここで飲んでねェで
早く仲間んとこに行ってやれよ!』


男『やべェ!!そうだった!!ワハハ!
じゃあ、おれァそろそろ行くぜ!』


男はこちらに背を向けて歩き出したかと思うと
振り向いてこちらを指差しながら言った。



男『あぁ…そうそう、お前ェいい目をしてる!

絶対店も上手くいくぜ。
おれの勘は当たるからな!!ガッハッハッハッハ』


『ふっ…ホントかよそれっ!!

っはは!ありがとよ』





赤髪の少年『あ!船長ー!!探したぜ!!』

赤鼻の少年『だァから言ったろ!?
ここに居るって!!』



男『すまねェな!!お前達!!

じゃあな!!楽しかったぜ!!』





アイツも、なんだか憎めない
気のいい奴だったのを覚えてる。






それから島に戻ってきて、
ようやく店が軌道に乗り始めた頃、
新聞で初めて名前を知った。


…島はそいつの名前で持ちきりだったっけ。




雰囲気がどことなくあの男に似ている気がした。









ロジャー。今日、お前によく似たやつが
うちに来たよ。


そいつも海賊やってんだとよ。


お前に子供が居たら、


あんな感じなんだろうな。



客『おやじ〜!手直ししてほしいんだ!』




彫り師『おう!今行くから待ってろ!
あと今日で店畳むからな!』



客『は!?たたんじまうのか!!?』



彫り師『いや…店を改装しようと思ってな…!』

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