第16話

親分日和
1,343
2022/08/06 04:32 更新
荒れた高波をかき分けるように
巨船モビーディックは、次の島を目指し
グランドラインを進んでいた。


轟く雷鳴と、吹き付けるような雨が
巨船を大きく揺らし、船を飲み込む勢いの波が
容赦なく襲い掛かる。



そこへ、船の上空に1匹の白いドラゴンが
飛んできて、船をぐるりと旋回すると
ようやく荒れた海は穏やかな気候を取り戻す。


船の縁にもたれかかった男、サッチと
泥のように甲板に項垂れるエースを含めた船員達は
ようやく荒れた息を整えた。
1番隊が白ひげの島に派遣され船を離れた辺りから、
グランドラインの天候はここぞとばかりに荒れ狂い、
数日間、モビーディック号が揺れに揺れて
船員達は甲板を駆けずり回っていた。


こんなにも大きな船があそこまで揺れるのだから、
グランドラインの天候の恐ろしさたるやを
船員達は久しぶりに思い返していた。
サッチ
サッチ
はぁ…はぁ…
やっと収まったな…
エース
エース
はぁ…いやぁ…
久々にひでェ嵐だったな
雨と塩水と打ち上がった海藻やらで
ベトベトになった船の縁に
小柄な少女が降り立つと、男ばかりの船内に
透き通るような少女の声が響く
(なまえ)
あなた
お待たせ
エース
エース
あなた!
サッチ
サッチ
…あなたか!
おけーり!!
助かったぜー!
エース
エース
待ってたぜ!あなた!
(なまえ)
あなた
ただいま
そう言って駆け寄って行くエースを
珍しくサッチが引き止める
サッチ
サッチ
エース待てよ…
長旅から帰ってきた愛しい嫁を
抱きしめたい気持ちも分かるが…

お前、頭から昆布ぶら下げながら
抱きしめんのか?
エース
エース
げ、いつ付いたんだよこれ
サッチ
サッチ
何が付いたのかさえ
気にかける余裕も無かったしな…
エース
エース
サッチ、お前の頭にも引っかかってるぞ
サッチ
サッチ
あー…だろうな
何が引っかかっててもいいわもう…
…なんて、疲労感丸出しの彼らを見て
あなたは《相当キツかったんだな…》と
苦笑いを浮かべていると
もう1人、船の縁に降り立った。
マルコ
マルコ
なんだ?
俺らが離れてる間に
船では頭に昆布ぶら下げるのが
流行ってんのかよい?
エース
エース
おう!マルコ!
サッチ
サッチ
言ってくれるじゃねェかマルコ…
俺らはお前らが船出てから
ずっと嵐と追いかけっこしてたってのに
少しは労わりやがれ!と
マルコに昆布を投げつけるとひらりとかわす。

するとあなたが、荒れた船内と
疲れ切って海藻と共に寝転ぶ船員達を見て
うーん。と言った。
(なまえ)
あなた
みんな疲れてるみたいだけど…
どうしようか、マルコ
マルコ
マルコ
そうだなぁ…
そう言ってマルコとあなたは水面を見つめた。

そんな様子を見たエースが
あなたの隣の縁から上半身を乗り出すように
水面を見つめると、何やら影が見える。
エース
エース
あれって…
そう言いかけた瞬間、
影は海流を立ち上げながら甲板へと流れ込み
甲板にあった海藻やら打ち上がった魚やらが
全て海へと戻された。

ジンベエ
ジンベエ
ワッハッハッハ!
これで綺麗になりましたかな?
水流から出てきたのは
ジンベイザメの魚人、ジンベエだった。

ジンベエはエースが白ひげの船に乗る前に
一度戦っており、5日間の死闘を繰り広げた間柄だ。


そんなこともあり、一応顔見知り
という状態だったが、
今となっては、昨日の敵はなんとやら、だ。

それから、何回か酒を酌み交わすうち親しくなった。

そんなジンベエだが、今回は
エースとあなたが隊を任されてから
初めての訪問だった。
エース
エース
ジンベエ!
なんだよ!来てたのか!!
サッチ
サッチ
っはは!
船掃除の手間が省けましたよ!
ジンベエ親分!
ジンベエ
ジンベエ
ちょうどオヤジさんの船に
顔を出そうと思ってた矢先、
偶然立ち寄った島で
マルコさんとあなたさんに会いまして
エースはジンベエの元に近寄ると、
10尺もある体を見上げた。

エース
エース
ジンベエ、今日ぐれェは
ゆっくり居れそうなのか?
ジンベエ
ジンベエ
エースさん…
わしゃあ、魚人族の恩赦とひきかえに
政府に就いとる身…

エースさんとあなたさんが
それぞれ隊を任されたと聞いたもんで
お祝いの酒を届けに立ち寄らせて
いただいただけで…
エース
エース
そりゃないぜジンベエ!
酒も肴もあるってのに…
エースは嘘だろ!?と言った声を上げる。
(なまえ)
あなた
エース、ジンベエ親分にも
立場ってものがあるんだよ
エース
エース
そりゃあ…分かってるけどよ…

王下七武海に名を連ねるジンベエが、
いかに旧知の仲とはいえ、四皇・白ひげの船に
おおっぴらにいるのは憚られるのだった。

ジンベエが申し訳なさそうに
断りの言葉を述べようとした時
船室の扉が開き、マルコと共に親父がやってきた。
オヤジ(白ひげ)
オヤジ(白ひげ)
呑んで行きゃあいいじゃねぇか
ジンベエ
ジンベエ
白ひげのオヤジさん……!

お元気そうで…!
オヤジ(白ひげ)
オヤジ(白ひげ)
グララララ!

ジンベエ!元気そうだな

エースとあなたの
就任の祝いに来てくれたのか…
ジンベエ
ジンベエ
ええ…!
こんなにめでたい事はない

せめて酒を、と…
オヤジ(白ひげ)
オヤジ(白ひげ)
グララララ!
じゃあ、尚の事呑んで行きやがれ
心配すんな、
ちゃんと準備は整える…
…あなた
(なまえ)
あなた
はい!親父!
あなたは親父の言いたいことを理解すると
姿を変え、上空へ駆けていく。
ジンベエ
ジンベエ
オヤジさん?何を…
エース
エース
まぁ、見てろって!
サッチ
サッチ
ジンベエ親分、
今日ぐれェはゆっくりしてってください

何せ、末っ子達の祝いだ
サッチがジンベエと話していると
船以外の周りの天候が荒れ始める。


波は穏やかなのに対し、天のみ荒れていると言った
自然界にはない不思議な光景だ。

程なくしてあなたが船に戻ってくると
親父の隣に降り立った。
ジンベエ
ジンベエ
…!!
驚いたわい…
こうも簡単に天候を変えてしまうとは…
(なまえ)
あなた
近海も見ましたが、
敵戦や海軍の船などは
見えませんでした。

船の周辺の天候も変えましたので、
しばらくは他の船も
近づいて来ないと思います。
オヤジ(白ひげ)
オヤジ(白ひげ)
…だそうだ、ジンベエ
もちろん呑んで行くよな?
ジンベエ
ジンベエ
ええ…!!
ここまでしてもらって
呑んでいかにゃあ
失礼にあたるってもんです

では、お言葉に甘えまして…!
甲板には酒や料理なんかが並べられ

向かいには親父がジンベエと
同じように酒を傾けている。


そんなジンベエの隣には
エースとあなたが座っており
隊の就任の祝いの酒を傾けた。
エース
エース
ジンベエ!聞いていけよ!
俺達の弟の話…!
マルコ
マルコ
ジンベエ、こいつらの弟は話は
長くなるぞ?
ジンベエ
ジンベエ
ワハハハ!
前も言ってたの!
麦わら帽子を被った…

確か…ルフィ、じゃったか
(なまえ)
あなた
そう!

そのルフィが、
もうすぐ海に出てくるんです!
ジンベエ
ジンベエ
ほう!
そりゃあ楽しみじゃのう!
新世界まで来ることがあったら
是非一目会ってみたいもんじゃ!
エース
エース
ああ…俺達の弟なんだ!
すぐ名を上げるぞ…!
宴も酣になり、ジンベエが帰る頃になると
空にはうっすらと月が見え始めていた。


親父と挨拶を交わし終えたジンベエと
見送りにはエースとあなたが付き添って
船尾の方に移動する。
ジンベエ
ジンベエ
すまんのう
エースさん達の祝いのつもりが…
わしの方が楽しませてもらって…
エース
エース
全然気にしてねェよ!
(なまえ)
あなた
そうそう!
久しぶりにジンベエさんと話せて
嬉しかったですし!
ジンベエ
ジンベエ
わしも久しぶりに楽しい時間を過ごした
また機会があったら…
エース&あなた『もちろん(だ)!』
ジンベエ
ジンベエ
お前さん達は
息がぴったりじゃのォ

…では!
エース
エース
またな!!ジンベエ!!
ジンベエはお辞儀をして応えると
船縁から海に飛び込んだ。

巨体が、たちまち海の闇の底に沈んで
見えなくなった。
(なまえ)
あなた
また会いたいな。ジンベエ親分
エース
エース
そのうちまた会えるだろ!
エース『あなた、戻るぞー!』

あなた『…はーい!』

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