起きたら、俺の視界にはいつも通りの天井があった。
隣にはいつも通りあなたが寝ている。
カーテンの隙間から差し込む朝日も、部屋の明るさも、いつも通りだ。
何もかもがいつも通りすぎて、俺は今日もアイドルとして頑張らなければいけないのではないかと錯覚してしまいそうだ。
そうだ。
俺はもう吸血鬼ではない。
たぶん。
実際のところ外見は何も変わっていない。
まぁ元々見た目は人間だったし。
あ、牙が無くなってる。いや、少し名残があるな…。
それに起きたときに喉が乾いているのも変わらない。
でも、あなたの血を飲みたいとは思わなかった。
前まではそう思いながら起き上がっていたのに。
これだけ、いつも通りじゃない。
やっぱり俺は、もう吸血鬼じゃない。
そう思うと、俺は幸せな吸血鬼だったと思う。
好きな人の血が飲めて、そのおかげで人間にもなれて。最高じゃないか。
とりあえず何でも良いから、俺が人間になったということを実感したかった。
起き上がって執事に挨拶でもしようかと思ったら、それは思わぬ重みで塞がれた。
「……ゔっ、」
『……ゆんぎくん、いきてるんですか…?』
「は…?」
『え…………しゃべってる……』
「寝惚けてんの…?」
『ううん、…だってもう3日も起きなかったから』
驚いた。
確かによく寝れた気はしているが、3日も寝ていたとは。
「ごめん」
『…?……よかったです』
「あなたはもう大丈夫なの?」
『私は普通に、次の日には元気でした』
「そうか、よかった」
『ユンギくん、もう一生起きないのかと思いました』
「俺は起きるよ、何としてでも」
『何としてでも?』
「うん、あなたのこと見てたいからね」
俺がちょっと甘いことを言うと、何かのドラマや映画のように顔を赤める。
頬も耳も、首までも真っ赤だ。
「顔、真っ赤だな」
『~~っ、それは!ユンギくんがそういうことを言うから!』
「俺のせい?」
『…はい』
「いいねそれ、俺に遊ばれるあなたも可愛いよ」
『~~っ、だから!』
「なあに?」
俺はあなたを抱きしめた。
それはそれは力強く。
離れていくのが怖いんじゃなくて、絶対に離さないと、分かって欲しかった。
『……いたいです』
「好きだ」
『あああ、いたいですって』
「会いたいって?もう…俺はここに居るだろ」
『ちょっと、ユンギくんイタいです』
「あなたは?」
『いや本当に、痛い』
「言って」
『……好きですよ!分かりきってるでしょ…』
「言って欲しかったんだよ、今」
『じゃあ、ちゅうしてください』
仰せのままに。
俺はあなたの頭の下に腕を敷いて、ゆっくりと押し倒した。
俺だけを映したあなたの瞳が、揺れてる。
普通に顔を近づけているだけなのに、全てがスローモーションみたい。
ゼロ距離になるまで、あと5cm。
あと、1cm。
あと3mm。
"朝からお盛んですね。そこで止めないと朝食抜きにしますよ"
「~~っ!!!おい!!!!」
あなたは笑ってた。
なんだこれ。めちゃくちゃ幸せだ。
続きはまた夜に、な。
Fin.
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
こういう風に話を書くのは初めてだったので難しかったけど、楽しかったです!
次の話も読んでくださったら嬉しいです。
そら












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。