自由になろう。そう決意して、真っ先に母さんの病室に行かなければならないと思った。
母さんは、俺を産んだがためにシームルグ家から逃れることが一生できなくなった。
出来るなら母さんをシームルグのしがらみから逃してやりたい。
けど、それは母子の縁を切るのと同義で。
俺は、そんなことが出来るような強い人間ではなかった。
だから、俺が自由になるためには、母さんに伝えなればいけない。そうじゃないと俺は・・・
ただの裏切り者だ。
無我夢中でここまで飛んできたけど、いざ母さんに会うと、どうしていいかわからなくなった。
俺だけ自由になっていいのか?
母さんは呪縛から逃れられないのに?
そう考えるだけで呼吸が浅くなる。
そうやって返すのが精一杯だった。
祖父母には、母さんが入院してからすぐに母さんとの面会を禁止された。
父上が母さんのお見舞いに行く時だけは、面会をすることを許可されたが、それも幼少期の間だけだ。
だから、母さんと会うのは約10年ぶりくらいだ。
・・・母さんは、昔の顔とだいぶ変わっていた。
長くて日にかざすと綺麗な茶色になった髪は、今は短くなり、黒くなっていた。
元々細かった腕が骨しかないのではないかと思うほどに細い。頰はこけ、やわらかい笑顔を見せてくれたいた目には隈ができていた。
そう言って母さんは目を伏せた。
そして、少し悩んでいるような仕草をみせて、口を開いた。
ゆっくりとした口調で問われた。
緊張からか心臓がうるさい。
静寂が痛い。喉が張り付く。呼吸が浅くなる。気を抜けば羽を動かす力が抜けて、下まで落ちてしまいそうだ。
どれほどの時間そうして居ただろうか。
1分、2分もっと短かったと思うが、もっと長かったようにも思う。息がしづらくてあまりわからない。
そしてようやく、母さんが口を開いた。
突き放された。そう思った。
当然だ。俺を産んだから、地獄みたいなシームルグ家に縛られることになったのに、自分の自由を無くした俺が自由になろうとしているんだから。
こうなることも覚悟してたはずだ。
わかってた。こうなるってわかってたはずなのに、胸が苦しい。本当に、身勝手にもほどがある。
涙で視界が馴染んだ。
ちゃんと見てて。も、頑張るから。も、どの言葉もこの言葉の重みに釣り合っていないような気がした。
だから、窓をくぐって、ぎゅっと母さんを抱きしめてからの、一言だけこう言った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!