響さんと一緒に人間を守る手立てを考えていたある日、俺たちにとって、絶望的な知らせが舞い込んできた。
「速報です。4年に1度開かれる王族会議。今年は12月に開かれる予定でしたが、前倒しをして8月15日に開かれることが正式に発表されました。
王族会議の予定が前倒しされるのは史上初です。政府は、前倒しの原因として桜都軍がスラム街を包囲してからも未だ抵抗を続ける人間のことを早急に話し合うことが目的だとしています。」
この一方的な「戦争」が始まったと報道されたのがまだ先週の話だ。
ここまで早く動くなんて思わなかった
それに、報道の次の日には寮長も学園から姿を消している。
早く動かないと間に合わなくなる。
しかし、いくら人間を生かそうと働きかけても、賛同してくれる人なんて世の中には皆無だった。
冷ややかな目で見られるのはまだマシで、罵倒や批判なんかもある。けど、1番堪えるのは「無視」だった。
人間に興味なんてないと、はっきり宣言したようなものだ。
思わず下唇を噛んで下を向く。
すると、周りが歩く揺れに混じって、誰かの大きな足がものすごいスピードで走ってくる揺れが足に伝わってきた。
俺は、蛇の王、バジリスク家の遠い分家の家系だ。
本家の王、ユータス・バジリスクと直接会ったことなんてないし、向こうも俺のことなんて知らないだろう。
だが、バジリスクの血は父や母、他の分家よりも濃く引いていた。
バジリスクは蛇の王。その移動方法故、揺れには人一倍敏感だった。
耳をすましていれば、喧騒の中に俺の名前を呼ぶ声が聞こえた
聞こえてくる声は響さんの声だが、彼女の姿は見えない。
おおかた、彼女に混ざる色々な人外の能力を使って走って"観て"いるのだろう。
少し待てば、足がライオンになった響さんがやってきた。
寮長は鳥系人外の王、シームルグ家。アラさんは天候系悪魔の女王だ。
あの寮長は、人間を擁護するような優しい性格でも甘い人でもない。
寮長会議で、一度は人間を生かすという決断をした寮長だけど、その発言がいつ覆されるかはわからない。
響さんは、最悪の未来が見えたのか、思わずうなだれた。
けど、まだ諦めちゃいけない。
この状況で、唯一可能性があるとするならば・・・
まっすぐ目を見て話す俺に、響さんは、何かを言いかけては口を開けて閉じてを繰り返し、最後にはしっかり頷いた。
俺は俺自身のために動く。
今は椿に、人間に生きて欲しい。
あの日、響さんに人間を生かすために手伝ってくれと頼んだ日からずっと思い続けてきた。
「俺は俺のために」そう思って、ギュッと拳を握った。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。