王族会議から3週間。
私たちは学園に戻り、平穏なときを過ごしていた。
嵐の前の静けさのような平和さに、逆に恐怖の念を抱くほどに。
対策のために、と教師から配布されたプリントの上に頭を乗せて、隣に座る航にブツクサ文句を言った。
呆れたのか、航は私と話をするために止めていたペンを再び走らせ始めた。
けど、このままじゃ本当にまずいのは確かだ。
いつ人間と人外がまたぶつかるかわからない中、いざという時のために動けるようにするには補習なんて引っかかっているヒマはない。
まぁなんとも適当な返事の仕方である。これが友達に対する態度か。
また不貞腐れそうになったのをとどめ、机の横に掛けていたカバンからペンとノートを引っ掴んだところで私の机に影が落ちる。
思わず「うげ」と声が出そうになったのを寸前で留める。
梅さんはいつも持ち歩いている扇子で口元を覆っていたが、眉が思い切り顰められていて、不快感は明らかだった。
精一杯の嫌味を込めて言うが梅さんには通用しないようだ。
梅さんに目を向けないように、ペン先を、汚いみみずがのたくったような字が書いてあるノートに走らせた。
思わずノートから目線を上げる。
たっぷり時間をあけたあと、航はゆっくりと口を開いた。
イライラと航を詰めるように言った
手を頭に当てて天を仰いだ。
航でさえこれなのだから、私の頭の中にあったはずがない。むしろ開き直りの材料ができて好都合だ。
現実を受け入れられずに、自分に都合のいい言い訳びかりが脳裏をよぎる。
梅さんがこれ見よがしにため息をつく。
出会ってからだいぶ経つし、そろそろこの人の高飛車なところにも慣れたと思っていたが、どうやら思い違いだったようだ。
もの凄くムカつく。
今日2回目の間抜けな声が出た。
恐る恐る言うと、航から小突かれた
叫んだあとに「あっ」と気づいて自分の口を覆うが時既に遅し。
青筋を立てた梅さんが、パチンと扇子を閉じてにっこりと微笑んでいた。
梅さんは再び扇子を開いて口元を隠し、うっすらと眉間に皺を寄せた。
梅さんが呆れてため息をつくのが聞こえたが、気づかないフリをした。
アタシ、優しいので!!!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!