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第44話

#43
9
2026/07/12 12:23 更新
王族会議から3週間。
私たちは学園に戻り、平穏なときを過ごしていた。
嵐の前の静けさのような平和さに、逆に恐怖の念を抱くほどに。
橘椿
こーんな大変な時に、学校はテスト、テスト、テスト。ほんーとやんなっちゃう
対策のために、と教師から配布されたプリントの上に頭を乗せて、隣に座る航にブツクサ文句を言った。
航・バジリスク
んなことやってる余裕あるのかよ。ただでさえ授業休んでたのに
橘椿
んー、今のとこ0点しか取れないけどー???
呆れたのか、航は私と話をするために止めていたペンを再び走らせ始めた。
けど、このままじゃ本当にまずいのは確かだ。

いつ人間と人外がまたぶつかるかわからない中、いざという時のために動けるようにするには補習なんて引っかかっているヒマはない。
橘椿
あ"ーーーーー!!!
航!!!私勉強するわ
航・バジリスク
おー、そーしろー
まぁなんとも適当な返事の仕方である。これが友達に対する態度か。
また不貞腐れそうになったのをとどめ、机の横に掛けていたカバンからペンとノートを引っ掴んだところで私の机に影が落ちる。
梅・ヤクシー
貴方、テスト2週間前だってのにまだ勉強も始めていないの?
思わず「うげ」と声が出そうになったのを寸前で留める。
梅・ヤクシー
橘。その顔をやめなさい。
梅さんはいつも持ち歩いている扇子で口元を覆っていたが、眉が思い切りひそめられていて、不快感は明らかだった。
橘椿
ついこの間まで学校に行っていなかったもので
精一杯の嫌味を込めて言うが梅さんには通用しないようだ。
梅さんに目を向けないように、ペン先を、汚いみみずがのたくったような字が書いてあるノートに走らせた。
梅・ヤクシー
ならそれ相応の努力をすることね。このテストで赤点を取れば、最悪、留年するわよ
橘椿
え!?
思わずノートから目線を上げる。
橘椿
航知ってた!?
たっぷり時間をあけたあと、航はゆっくりと口を開いた。
航・バジリスク
……まぁ
橘椿
なんで言ってくれなかったの!?!?
航・バジリスク
そんな余裕なかっただろ。それに……
橘椿
それに?
イライラと航を詰めるように言った
航・バジリスク
……俺も忘れてた
手を頭に当てて天を仰いだ。
航でさえこれなのだから、私の頭の中にあったはずがない。むしろ開き直りの材料ができて好都合だ。
現実を受け入れられずに、自分に都合のいい言い訳びかりが脳裏をよぎる。
梅・ヤクシー
はぁ……
梅さんがこれ見よがしにため息をつく。
出会ってからだいぶ経つし、そろそろこの人の高飛車なところにも慣れたと思っていたが、どうやら思い違いだったようだ。
もの凄くムカつく。
梅・ヤクシー
いいわ。教えてあげる。
橘椿
え?
今日2回目の間抜けな声が出た。
梅・ヤクシー
だから、教えてあげるって言ってるでしょう。
橘椿
でも、梅さん自分の勉強…
恐る恐る言うと、航から小突かれた
航・バジリスク
この人、学年首位だぞ
橘椿
嘘でしょ!?!?
叫んだあとに「あっ」と気づいて自分の口を覆うが時既に遅し。
青筋を立てた梅さんが、パチンと扇子を閉じてにっこりと微笑んでいた。
梅・ヤクシー
あら。そんなに言うならわたくしが教えなくても大丈夫そうね
橘椿
冗談です!すみません梅さん!是非!是非勉強を教えてください!!!
梅さんは再び扇子を開いて口元を隠し、うっすらと眉間に皺を寄せた。
梅・ヤクシー
全く……
梅さんが呆れてため息をつくのが聞こえたが、気づかないフリをした。
アタシ、優しいので!!!

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