ど、ど、どういうこと!??
私は頭を抱えながら…目の前にいる生物をじっと目で観察する。
夢じゃないのなら、話は別だ。
何?現実に何が起こってるのよ!?
トントントンッ!! ))
さっきの悲鳴で誰か来たのかドアを叩く音がする。
そうだ、助けを求めよう。
「ここに謎の生物がいます!」
宇宙人なのかもしれない…!!!
私は急いで玄関へ向かい、ドアノブを開けた。
私の言葉にもっと目を開く隣のおばさん。
理解が追いつかないおばさんを必死に部屋へ引っ張り込む。
そして、ちょっこんと座っているバケモノへ指差す。
落ち着かない私をそっと落ち着かせるのように…隣のおばさんは、両手をあげて「まぁまぁ」と揺らした。
そう言いながら私のおでこを触ってくる。
しかし、熱はなかったらしくおばさんは眉を寄せる。
目がおかしいんじゃないか?このおばさんは。
明らかに目の前にいるんだけど…。
テレビとかでよくあるドッキリ?
二人ともして私を騙してるのだろうか?
おばさんは、優しく微笑む。
今になってようやく理解出来た。
どうやらおかしいのは私の方らしい。
この生物が見えるのは…私だけ?
この変な鳴き声が聞こえるのも私だけ。
目の前にいるおばさんは、本当にバケモノの鳴き声が聞こえない。
もう…その以上、何を話しても無理だ。だって…見えてないだもの。
おばさんは、「いえいえ、何かあったら言ってね。」と言い残すとこの部屋から出て行った。
隣の人が優しかったのが救いだ。
その背中を見送り…ドアがだんだん閉まっていくたびに怖くなって来た。
私しか見えない?どうして…私だけなの?
【ドアが閉まる音】
視線を背中に感じながらゆっくりと振り返る。
私より大きいバケモノ。
茶色な瞳で私をじっと見つめる。
ずっと見つめ合うと吸い込まれそうな気がして、さっと目を逸らした。
バケモノは、また紙にペンを走らせ…その内容を私に見せた。
その内容で…私は目の前にいるバケモノは、酷くて怖いバケモノじゃないと理解出来た。
言葉が喋られない変わりなのか、頭をペコりと下げてきた。
紙にはこう書いてあった。
『ごめんなさい。』
どうして君が謝るのだろう。
よく考えば、私のために朝ごはんを作ってくれたじゃないか。
それなのに、私は叫び…バケモノを悪者として助けを求めた。そんな自分が恥ずかしくなった。
【やっぱり、見た目だけで判断したらダメだな。】
何か思い出したのかバケモノは、またペンを動かせる。
『早速ですけど、
今日からここに住ませていただきます!』
「住ませてください!」でもなく、
「住ませて頂いてもいいですか?」でもなく…
「住ませていただきます!」…!??
サポート…したい?この私を?
紙を持ちながら…優しく微笑むバケモノ。
多分、私は口を開けてポカーンとした顔でいるのだろう。
多分…その日からなんだろう。
私の人生が少しずつ変わって行ったのはー。
ーー【ちょい足し】ーーーーーーーーーーーー
((気楽に読んで下さいなw))【別に読まなくても大丈夫な内容です(^^;))
どうしても聞きたい…!
昨日の夜どうやって入ったのか!?
幽霊みたいにすり抜けてきたのか…。
ドアを開けた時にそっと入り込んだのか……!?
恐る恐る聞くと…バケモノは、バァッ!と明るい顔をすると私の裾を握りながら玄関へ向かう。
人差し指でドアを指すと、微笑む。
『見ててよ?』と言う意味だろうか。
私が頷くと、バケモノはドアの方へ歩いたと思うと…そっとすり抜けた。
ますます謎が深まるバケモノだ。
こりゃ、気になって死にそうにないなぁ。
昨夜…言ったことは撤回としよう。
ピコっ!》
…危なかった。
また悲鳴をあげて隣のおばさんに来てもらう所だった…。
すり抜けるのはいいけどまだ見慣れてないから、顔だけ出すのは、生首に見えるので…
《ホラー》になります。
【ちょい足し 終】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!