流れ終わった"映像"を見て、ドサッと膝をつく。
それでも、痛みも衝撃も何も無かった。
空気がスッと周りに少し散っただけだった。
ノイズが入った声は苦笑したようにそういう。
諦めたように言う私に、声は更に追い打ちをかける。
私は、二つ返事で頷いた。
ぽくぽくと鳴る木魚の音。
お経の声。
あちこちで聞こえるすすり泣く声。
充満している線香の匂い。
なんて言おうとしていたのか聞くことが出来ないまま、あなたの名字は息を引き取った。
単純に「ありがとう」なのか、それとももっと長い言葉だったのか。
いや、そんなことよりも。
なぁ。
葬儀が終わり、外に出る。
空を見上げると、皮肉な程に晴れ渡っていて、真っ白な雲がひとつ、ふたつと浮かんでいるだけだった。
じっとそれを見ていると、ゆっくりと流れていき、向こうの方から3つ、小さな雲が流れてきた。
5つの雲は、悠々と空を泳いでいた。
それはまるで、あの5人を模しているようだった。
刃物を持った男は、"安室透"に心酔した彼女に別れを切り出されたことであの犯行に至ったらしい。
僕としては、あの男の彼女を誑すつもりなんて全くなく、逆恨みも同然だった。
しかし、そのせいであなたの名字が……
あの、僕よりも何倍も小さな身体のどこにあんな生命力があるのか、いつもこう言っていた。
「小さいからってバカにすんな。私は私の足で立つ」
それから、決まって照れたようにこうも言う。
「でも、助けてって言ったら助けてね」と。
そう言うくせに、SOSを出したことは無かった。
私は大丈夫だ、と。
なにがあっても絶対に。
だったらきっと、大丈夫だ。
もしも僕が、あなたの名字を死なせてしまったことを後悔していたら怒られてしまうだろうな。
それと同じように、自分の命と引替えに助けたことを後悔なんてしていないだろう。
だからこそ。
あいつが、あなたの名字が、僕なんて助けなければ良かったなんて後悔しないように。
前を向いて生きていかなければいけない。
あなたの名字だけじゃない。
萩原や松田、景や伊達班長にも、あの世で出会った時に恥ずかしくないように。
目線を、空から前に戻す。
仕事に向かうため、歩き出した。
"映像"は、降谷が歩き出したところで終わった。
唇をキュッと噛み締める。
噛み締めた、はずだった。
なのに、何も感じなくて。
涙すら、出なかった。
悔しさか。虚しさか。やるせなさか。怒りか。絶望感か。それとも、別の。
何かは分からないけれど、とにかく色んな負の感情がグルグルと渦巻いていた。
そんな時、声が救いの手を差し伸べるかのように言った。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。