自嘲気味に笑ってみせる。
この暖かい雰囲気をぶち壊すかのように声が言った。
まだダメだ。
そう言いたいけれど、時間が押しているのかもしれない。
まだまだ、話し足りない。
それはみんなも同じなようで、寂しそうな表情をしている。
疑問符が一応付いているけど、イエス以外受け付けていないような声色だった。
どこかで絶対に覚悟を決めなきゃいけないのなら、もう、決めてしまった方が楽だ。
私は、仕方なく、しっかりと頷いた。
向こう岸が少し光ったので目を向けると、どこからともなく小さな舟と、それを漕ぐ渡し守が現れた。
どんな風貌なのかはさっぱりな程遠くにいて、舟と渡し守がセットで豆粒サイズだ。
ゆっくりと、ゆっくりと、流れる雲のような速度で、こちらに向かってきている。
本当は漕いでいるフリをしているだけで、こっちに向かってきやしないんじゃと疑ってしまうほどに、ゆったりと。
ようやくどんな見た目をしているのかが分かるほどに近づいてきた。
しかし、ある場所で泊まって動かなくなった。
改めて振り返って、みんなにお礼を言おうと思った時。
もう、誰1人そこにはいなかった。
寂しさを感じながら、声に従って歩く。
歩いていくと、川のほとりにはたくさんの彼岸花が咲き誇っていた。
そして、その傍らに2人、いや、2匹か…?の、鬼のような風貌の者たちがいた。
私は、慌ててポケットの中を探った。
すると、ズボンの右ポケットが、ジャラッと音を立てた。
中のものを全て取り出して、奪衣婆に渡す。
奪衣婆は、舟を指さした。
言われるがまま右足を舟に乗せる。
すると、重さなんて無いはずなのに、舟が少し揺れる。
舟に座って、渡し守の舵に身を任せる。
川の中央に差し掛かった時、眩い光に包まれた。
今度は、目を刺すような、強い強い光ではなく、眠ってしまいたくなるような、柔らかく暖かい光だった。
後悔しないはずだった。
降谷を助けたら、何かが報われると勘違いしていた。
どうしようもなかった過去への、慰めをしたつもりだった。
なのに。
その念だけは、消えることはなくて。
向こう岸に近づくにつれて、強くなっていった。
どれだけ、胸が潰れそうな程の後悔をしたとて、それを吐き出す術はない。
死ぬということがどういうことなのか、ハッキリと突きつけられた気分だった。
川の流れは私の気持ちを落ち着かせてくれるようで、岸辺に近づくにつれて、気持ちは不思議と凪いでいった。
白く柔らかな光が収束していき、さっきまで居た桃源郷のような世界を一段と幻想的にしたような世界が広がった。
もしもここが天国なのなら、どれほど素敵な場所なのだろうか。
吸い込まれるように、1歩、足を踏み出す。
後悔など、無くなっていた。
それが怖くもあり、嬉しくもあった。
私は、毛布に包まる小さい子供のように、暖かな光が降り注ぐこの地に寝転び、目を閉じる。
三途の川のほとりに、一輪の彼岸花がふわりと咲いた。
[完]











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。