またね愛羅ちゃんって言いながら、慎は爽やかに帰って行った。
ありがとう!って叫ぶとヒラヒラと右手で手を振ってくれた。
そして、また目の前の家に視線を移す。
やっぱでかい。。
なんていうか、敷地がでかい。
まず、だだっ広い庭があって、その奥に洋館みたいなでかい建物。
普通の住宅街のこの場所には不似合いすぎて逆に浮いてるくらい。
インターホンどこ?
そう思って玄関の周りを探してたら、でかい扉が開いた
走ってきたのは美人な女の人。
綺麗なワンピースにカーディガンを羽織っていて、いかにも素敵な奥様。
もしかしなくても、、
お母様だ!! 見えない! 美しすぎる!!
しかもあたしはなんで抱きしめられてるんだろう。
お母様はあたしの背中を押して中に入れた。
お母様がでてきたでかい玄関は開いたままになっていたみたい。
玄関を入ると、でかい玄関ホールと高い天井が広がっていた。
あたし、場違いだ。
灰色の制服を適当に来ていてこんな洋館に招かれても不似合いすぎる。
招かれたのはリビング。
シャンデリアあるし、ソファも花柄で高そう。。
……あたしよりも壱馬がこの家が似合わなさ過ぎると思う。
お母様はあたしをリビングに招き入れると嬉しそうに言った。
そんな凄いことなんだろうか。あたしにはよく分からなかったけど、お母様が言うのだから珍しいことなんだ。
リビングのソファに座ってと言われたのでそこで待っていると、お母様が紅茶を出してくれた。
お母様もあたしの前に座り、あたしにニコニコ話す。
謝っても笑顔だった。
ただこれからどうしようって思い悩むあたしを立ち上がらせてくれた。止まらない涙を、(強引に)引っ込ませてくれた。
ニコリと笑うお母様に違和感を感じたのは気のせいだろうか――――――。
どこか
悲し気で、何か言いたそうな…。
がんじがらめ?救う?強気な壱馬がそんな風に思われてるのを想像できなくて思わず首を傾げた。
母親に心配かけさせることって確かにあると思うけど、その表現は壱馬には似合わなかった。
だけどお母様はすぐに言葉をかき消すように笑って見事に誤魔化した。お母様が言いたくないならしょうがないのであたしもそれ以上さ聞かない。
ガチャ🚪
レイちゃん。あたしと半分血が繋がっている義妹。
赤いランドセルを背負った可愛い女の子が走ってリビングに入ってきた。
壱馬がシスコンになるのも分かる。
例えるならまさに天使。
だから走って帰ってきてくれたのか。
てゆうか、壱馬って妹にメールするんだ。
レイちゃんに会えた嬉しさと、ちょっとした緊張に、ポカーンとしてるあたしにかけよってきた
座って視線を合わせて言うと、ふわふわ〜と嬉しそうに笑った。
慌てて2人が顔を見合せた
誤魔化すように笑ったレイちゃんは、たまらなく可愛かった。
(もはやメロメロだ)
あたしにめいっぱい近づいて座ったレイちゃんは満面の笑みで言う。
あたしのほうこそ、嬉しくて、たまらなかった。義妹がいただけで嬉しいのに、こんな嬉しいこと言ってもらえて。
あたしも嬉しいよって言うとさらに笑うレイちゃん。
本当に天使のよう。
レイちゃんとひとしきりお喋りし、お母様は7時頃晩御飯を食べさせてくれた。
意外に和風の肉じゃがとか焼き魚。
そういうお母様は、よっぽど壱馬が可愛いんだと思う。
愛されて生きてんのになんでヤンキーなんだろう。
どうやら弟までヤンキーなのは兄貴の真似っ子らしい。
そのまま弟、ユウくんの話になった。
壱馬は兄貴みたいになりたいって思う弟を、ちょっとは思っても本気で鬱陶しいなんて思わない。お母様もレイちゃんもモチロン同じ気持ちみたいだ。
ガチャ🚪
パタパタとレイちゃんは玄関に走って行く。
レイちゃんもお兄ちゃんっ子だ。
壱馬の手を引っ張るようにリビングに入ってきた。晩ご飯も食べ終え、ソファに座るあたしに視線を向けニッと笑った(多分)。
『な、大丈夫だったろ』って言われてるみたい。
たしかに、楽しい時間だった―――
ムカつく! 何かま間違ってんだよって顔しやがって! こいつ超失礼!!
レイちゃんのフォローはあったけど…まぁ実際確かにそんなことは無い。決してモテたことはない。人生1度はモテ期が来るなら、とっとと来て欲しいです。
興味無さそーー!!!! 自分で聞いといて!!!
真剣に聞くから正直に答えちゃったのに!
なにやら兄妹仲良くじゃれあってる。
兄貴ヤンキーだけど仲良しなんだなぁと感心してみる。
壱馬は勢いよく立ち上がり、机にあった(チャリ? バイク?)の鍵を持った。
そう言ってくれるレイちゃんとお母様にちょっと後ろ髪を引かれながら立ち上がった
何だか兄妹喧嘩っぽくなってきてる……。
壱馬はいたってクールだけどレイちゃんはムキになってきてる。
やっとレイちゃんが小6なんだと思い出した。
壱馬の都合?
レイちゃんから繰り返し出てくる単語にあたしは首を傾げた。
ぷにゅッ
レイちゃんが何かを言いかけた時、今までクールだった壱馬が慌ててレイちゃんを捕まえて片手で両頬を掴んだ。
タコみたいな口にされたレイちゃんは、モゴモゴして話せない。
ジタバタするものの、レイちゃんは離して貰えず。
観念して大人しくなると壱馬はようやく手を離した。
あたしがそう言うとシュンとしながらも頷いてくれるレイちゃんはやっぱり死ぬほど可愛かった。
でかい玄関であいさつをしている間にとっとと壱馬は外に出てた。
少しするとバイクのうるさいエンジン音が聞こえてきた。
にっこりと笑うお母様にぺこりと頭を下げ、レイちゃんに手を振って、物凄くでかい扉開けた門まで歩いていくと、既にバイクに股がった壱馬がいた。
ものすごく近いのに……。いっそ徒歩でいいのに……。
壱馬のバイクは慎のバイクより一回りも二回りもでかくて、とても怖った。
ギューって壱馬にしがみついてても振り落とされそう。。
そして、
案の定、死ぬほど近かった。歩いても10分かからないんじゃないだろうか。
何でわざわざこんなでかいバイク。。
よろりとバイクから降りて壱馬に言う。
頷く壱馬を見ると部屋に行けって顔をしてるのであたしはマンションに入って行く。
階段を上がり廊下に出て下を見たらまだバイク股がっている壱馬がいた。
校舎内には8時までに入る。了解です。
あたしは見送ってくれるのが嬉しくて、素直に頷いた。あたしがドア開けて振り返ってもそこに壱馬がいてくれた。手を振ったあたしに手を振り返してくれたりなんかして。
部屋に入ったらバイク音が去っていった。
色んなことがあったこの日。
あたしはおばあちゃんが亡くなってから初めて、泣かずに眠れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。