第10話

君の隣にいたいから 3
397
2022/04/22 14:45

次の日___
つる公
パイセン達、チーッス。
今日も8年C組の扉を開ける。
スウィーツ
つる公~~~!!!
そして、スウィーツパイセンが突っ込んでくる……


って、えっ!?ちょっ、なっ!?
つる公
わぁぁぁぁぁぁぁ!?
ドッカーン
4人
ス、スウィーツ!?つる公!?
残りの先輩軍は声を上げた。いきなり突進してきたスウィーツパイセンを躱すこともできずに、自分は壁に衝突した。
つる公
いったぁ……い、いきなり何するんスか!?びっくりするじゃないスか!
自分はパイセンに文句をぶつけた。しかし、パイセンは気にした様子もなく、目を輝かせて言った。
スウィーツ
ねぇねぇ!最近困ってることとかない!?ピンチとか!!
つる公
は、はぁ?急になんスか!
よくわからないけど、とにかくパイセンはなんか楽しそうだ。
スウィーツ
ん?だから、なんか困ってることない!?なんでも言って!!
ノキオ
あぁ……
名作
……ノキオ……なんかあった?
スウィーツ
ねぇねぇ!!
つる公
な、何なんスか、マジで……



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つる公
で。
振り返って言う。
つる公
なんでスウィーツパイセンは自分を付け回すんスか!!
にっこり笑うスウィーツパイセンに向かって。
スウィーツ
だってー、一緒にいないとつる公が困ったりとかピンチになった時とかに気付けないじゃないかー。
ものすごい笑顔。この上ない笑顔。かわいいけどさ。
つる公
…………
絶対なんか吹き込まれたっスね、これ。
……別に、ラッキーだとかは全然思ってない。



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ノキオ
__ってことがあったんだよ……
3人
あぁー………
3人で納得の声を上げる。今は、ノキオが僕たちに向かって説明し終わったところだ。
ボルト
スウィーツは思い立ったらすぐ行動タイプまんねん。
むすび
だからあんな、いつも以上にしつこいんですね。
ノキオ
まぁ、スウィーツは、ただつる公と仲良くなりたいっていう感じで悪意はないみたいだから良いんだけど……
名作
つる公が……ってところ、だね
つる公は、スウィーツに優しくしたことがない。なんていうか、恥ずかしいんだと思う。でも、スウィーツのことが好きだもんな……つる公は、結構な意地っ張りだから、つる公がどうなっちゃうか、よく分からない。僕たちに相談とか、したことないから。
ボルト
先輩であるおれたちがなんとかしないといけないまんねん。
ノキオ
そうなんだけどな……
むすび
つる公、ぼくたちが間に入ると怒るんじゃないですか?スウィーツにバレたくないって言いそうです
ボルト
ある意味ツンデレだからな……
名作
まぁ、しばらくは様子を見てみよっか。下手に手を出すことじゃないし。
心配だけど、つる公のことだ。きっと僕たちが手出ししなくても彼なら上手くやれる……だろう。
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スウィーツ
あ!つる公、石ころだよ!!転ばないようにね!!





スウィーツ
つる公、電柱!歩きスマホは危ないよ、気を付けて!!





スウィーツ
今日は気温が高いねぇ、熱中症には気を付けよう!はい、お茶!!








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つる公
あーっ、もう、鬱陶しいっス!!
スウィーツパイセンの付きまといから数日。何回もぶっ飛ばしたってのに、まだ付きまとう気っスか!?飽きないんスか……
つる公
そんなにパイセンに助けてもらうほど自分はバカじゃないっスよ!パイセンじゃないんスから!!
スウィーツ
えぇー………
つる公
第一、何で急に付きまとうようになったんスか!?
スウィーツ
ん?ボクはね、つる公と仲良くなりたんだ。
つる公
……!?
そんなことを、当たり前のように言ってくる。なんでそんな真っ直ぐにそんなことを言えるんスか。
スウィーツ
だってつる公、ボクのこと、すごくバカにしてくるでしょ?
スウィーツ
なんかボク、つる公に嫌われちゃったのかなって。悪いことしちゃったのかなって。
スウィーツ
だから、つる公のピンチとかを救って仲良くなりたいなぁって!
つる公
………っ





……言えるわけないじゃないっスか………自分が、つる公が、スウィーツのことが好き、だなんて。
いつも酷い態度を取っているのは、ちゃんと話すのが恥ずかしいからだ、なんて。





つる公
べ、別に嫌いってわけではないっス
スウィーツ
え?
つる公
パイセンはバカだから、イジりがいがあるから、バカにしてるワケっスよ……
つる公
第一、嫌いだったらイジったりどうこうじゃなくて、一緒にいたりもしないっしょ?
全部までは言えなくても、パイセンに不安にはなってほしくなくて、本心を少しだけ口にする。……今、バリダセぇこと言ってるっスね……
スウィーツパイセンは、それを聞いた途端、目に光が輝いた。笑顔になった。そして、自分にその笑顔を向けた。
スウィーツ
良かったぁ、ボク、つる公に嫌われてるんじゃないかって、心配だったんだぁ。嫌われてないみたいで、安心したよ、これからはさ、もーっと仲良くしようね!!
ホントに眩しい笑顔だ。目を閉じてしまうくらいに……





やめてくださいっスよ、こんな自分なんかにこんな美しい笑顔………
……こんな笑顔ができる人のそばに、こんな笑顔を自分に向けられるような人のそばに、こんな汚れた自分はいていいんスか……?





スウィーツ
つる公?
つる公
……あっ……別に何でもないっス。
くるっと向きを変えて、帰り道を歩き出そうとする。
つる公
じゃあ自分、帰るんで。
スウィーツ
えっ、じゃあ一緒に……
つる公
いいっス、急いでるんで!
パイセンの言葉もロクに聞かず、それだけ言うと、さっさと歩き出した。
しばらくして後ろを振り返ると、スウィーツパイセンは、こっちを見つめたままだった。
胸の辺りがもやっとした。

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