雪がしんしんと降り積もる校庭を私はぼんやりと眺めていた。
もう最終下校時刻が差し迫っているのに、私の視線の先には一人の男子が走っている。
この肌を指すような寒い日に、拓也は信じられない事に半袖短パンで三十数周目に突入していた。
あ、コケた。
べしゃっと拓也は転んで頭から地面に突っ込んでしまった。そのままちっとも動かないので、「あぁこれヤベーやつだ」と思い、私は階段を駆け下りあいつを回収しに行く。
雪が積もり始めたあいつの背中を呆れながらはたき、いつも通りあいつが嫌がるお姫様抱っこで先生の居る保健室に運ぶ。
そう、実は拓也が倒れるのは日常茶飯事で、私はその回収をする羽目になっている。
理由は、拓也がしつこく私に構ってくるからという私としては大変迷惑な話だ。
だから、せめてもの嫌がらせとして拓也が意識を失って私が運ぶ時は、屈辱のお姫様抱っこでなるべく多くの生徒の目がある場所を通る。勿論、後で恨み言を言われるが、『じゃあ、倒れるなよ』と言えば、黙る。
いや、そこは男らしく『もう倒れたりしない』って言えよ。もう倒れることは確定なのかよ。
ハァと溜め息を吐くと、真っ白い世界に溶けて消えていく。私を、残して。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!