大平祥生side
病室でゆっくりしてたところ、蓮先生がカーテンを開けて入ってきた。
蓮先生、笑ってる。
……なんでだろ。
なんか怖いんだけど笑変なことされへんよな?笑
そう言われたって、そんな簡単に寝れへんわ。
PICUにおったら会いには行けへん。ルールやししゃあないけど……会って大丈夫だよって言ってもらえるまで、安心はできへん。
碧海もあんま元気ないし。
最近、悪いこと続くなぁ……。
蓮先生が緊張しているように見えた。
……なんか、よくなかったん?
そんな不安が過ぎる中、蓮先生は予想外のことを口にした。
驚きのあまり、理解が追いつかない。
……一時退院?
ほんまに言っとるん?この間急激に悪化したばっかやけど。
でも、翔也や碧海のことを考えるとどうも喜べんかった。
なんとも言えへん、複雑な感情。
俺に気を遣ってか、蓮先生は病室を出ようとする。
その後ろ姿を、俺は止めんかった。
誰にも言わんようにしよう。
お母さんとか話さなあかんけど、碧海や汐恩に聞こえないようにしよう。
あんなに退院したくってしょうがなかったんに、なんで。
なんでこんなに、喜べないんやろう。
院内学級は終わるのが早い。
とっくに終わって帰ってきてたけど、俺はまた院内学級の教室に出向いた。
景瑚くんに話そう。
景瑚くんは優しい。明るくて面白いから楽しくしてくれるんに、優しいからつらいときにはいつも寄り添ってくれる。
小児科ってだけあって、そういう先生は必要不可欠。
中学生くらいの人からも、まだ2、3歳の子からも景瑚くんの人気は絶大や。
そっと教室の扉を開ければ、座って本を読んでた景瑚くん。
さらさら読んでるんやなくて難しい顔して必死に読んでる感じが景瑚くんっぽいわ笑
景瑚くんは俺に気づいてくれて、すぐに椅子から立ち上がった。
いつも子どもたちで溢れた教室が静かやと違和感すごいな……。
何も言わない俺を見て、景瑚くんはとりあえず俺を椅子に座らせてくれた。
景瑚くんは隣に座って優しく背中をさすってくれる。
景瑚くんが飴玉が入ってるカゴを差し出してくれた。
いちごみるくの飴を手に取ると、景瑚くんが個包装を開けてくれる。
……すごい、細かい気遣いよな。
いちごみるくの飴は優しい甘さやった。
治療が多いから、ほとんど食事制限がある。こんな甘いもん、なかなか食べられへん。
でも景瑚くんは、子どもに渡すお菓子にすごい気を遣っとる。
成分表見て奨先生とこれは大丈夫、これはこの子はいいけどあの子はダメ、って話してたとこ見たで。
景瑚くんは頬杖をつきながら斜め上を見上げていた。
そっかそっかぁ〜って、いい意味であんまり重く捉えてへん感じ。
背中をゆっくりさすってくれる手は止まらない。
毎日キラキラ生きている景瑚くんらしい回答やった。
その1歩が、取り返しのつかへんことにはならんかな。
どうしてもここにいたいわけちゃう。
でも碧海たちとは一緒にいたい。
毎日の薬は嫌やし、点滴もたまに失敗されて痛い。
こんな毎日が終わるなら……それはそれで、嬉しいけど。
景瑚くんの言うことはよくわかる。
何度も、悲しい別れを経験したから。
治療も虚しく亡くなったり、ここじゃ手に負えなくなって転院してしまったり。
病状が悪化してさよならするより……元気になってくれた方が、嬉しいもんなん?
気づいたら涙が溢れていた。
嫌われたくない。
それだけが、紛れもない本音で。
やって、俺みんなだけが友達なんやもん。
小さい頃からこの病院で過ごして、もう、ここ以外に友達なんてほとんどおらへんもん。
景瑚くんと一緒にいると安心する。
お医者さんでも看護師さんでもない。
景瑚くんは、俺らの病気を治すためにいる人やないから。
心を支えてくれる、大事な存在。
景瑚くんと一緒に手を繋いで病室に戻る。
ベッドに寝かせてもらって、優しく頭を撫でてもらった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。