與那城奨side
瑠姫がなんかトラブったとかで呼び出される。
蓮は翔也と話してくるって。
瑠姫は病棟とは離れた場所にいるみたい。
普段は滅多に行かない最上階に向かった。
丁寧にノックをして入る。
まあそりゃ、相手はお偉いさんだからね笑
俺はあんまり事情を聞けてない。
何があったのか、わかんないけど……。
瑠姫が翔也になんかしちゃったんだって、想像したくもないけど察してしまった。
瑠姫は俯いて震えていた。
まさか、瑠姫がそんなこと……。するはずがないのに。
それを翔也が嫌がったかはともかく、確かに問題視されてもおかしくない状況だった。
瑠姫は、どんなつもりでそんなことを……。
冷たくそう言われただけだった。
……いや、見逃してもらえただけ幸運か。
ゆっくり立ち上がった瑠姫と共に部屋を出る。短い説教だけど、何気にショックだよね、笑
扉を閉めると、瑠姫は目から涙をこぼした。
そっかぁ……。
そういう事情だったんだね。じゃあ瑠姫は悪気があったとか、そういうわけじゃないんじゃん。
とりあえず翔也にも事情聞かないとわかんないし、場合によっては瑠姫を担当から外すことになる可能性だってある。
悲しいし申し訳ないけど、子どもたちと俺らは、そんな深く関われるような関係じゃないんだ。
医師と患者。
言ってしまえば、ただそれだけの関係だから。
瑠姫は涙目のまま翔也の元へと謝りに向かった。
全力で謝ってるけど、翔也はやっぱり嫌がってるとかっていうわけでもなかったみたい。
大丈夫ならそれでいいけど、本当は……なんてことはないといいな。
翔也だって、戸惑うだろうな。
いつもの担当の看護師さんが泣きながら謝ってくるって……。
異変が起きたのは、そのときだった。
瑠姫が頭を下げたまま胸を抑える。
そのまま膝から崩れ落ちてしまった。
焦って駆け寄って、瑠姫の体を仰向けにした。
瑠姫の目は空いてる、けど……。口をぱくぱくさせながら、真っ青な顔で助けを求めるようにこっちを見ていた。
細くて頼りない手に力が入った。
……良かった、そこまで重症ではなさそうだな。
一時的に血圧が下がって力が抜けただけなのかもしれない。
だとすれば少し休めばすぐに回復できるはず。
服に手を入れて直接胸を触る。
かなり頻脈だけど……血圧下がってるし、逆にこれくらい動いてくれないと。
唇や爪の色も徐々に戻ってきていた。
……平気そうだね。一時的にふらっと来ちゃっただけなのかな。
精神的にもかなり乱れてるところだったし、疲れとかストレスとか、体の不調にはいろんな原因が考えられる。
……何も病気の再発だなんて、すぐに焦る必要なんてない。
瑠姫の背中に手を入れてゆっくり起き上がらせる。
また顔からさっと血の気が引くけど、すぐに血色が戻ってきた。
……迷走神経反射かもな。
翔也の純粋な瞳。
治ったと思ったら別の場所に疾患が見つかったり、再発して合併症まで患ったり。
そういうことばっかりの世界で生き続けてる翔也には、そう簡単に大丈夫って言葉は効かなかった。
このままPICUにいたところでよ。
なんかあって翔也に心配かけるのも嫌だから、二人でPICUを後にした。
瑠姫が立ち止まって顔を抑える。
しょうがないよ、ここで泣き出したって。
黙って背中をさすった。
俺にだってもう、言えることはないんだ。
俺と瑠姫だって、たまたま同じ病院に入院して、同じ病院で勤務してるってだけ。
深い関係になることのなにが悪いんだろう。
患者と医師、患者と看護師、患者同士、医師と看護師……。
どんな関係であったって、人と人ってことには変わらない。
深い絆を育むことが子どもたちの安心にも繋がるものなんだけど、どうもそう簡単にはいかないみたいだ。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。