第31話

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2025/11/17 11:58 更新
與那城奨side


瑠姫がなんかトラブったとかで呼び出される。
蓮は翔也と話してくるって。

瑠姫は病棟とは離れた場所にいるみたい。

普段は滅多に行かない最上階に向かった。
與那城奨
失礼します
丁寧にノックをして入る。
まあそりゃ、相手はお偉いさんだからね笑
上司
ああ、やっと来たか
與那城奨
理事長、この度は、大変ご迷惑を……
上司
迷惑をかけたのは僕にではないでしょう
上司
翔也くんに、どんなつもりであんなことをしたのかねぇ、白岩くん
俺はあんまり事情を聞けてない。
何があったのか、わかんないけど……。

瑠姫が翔也になんかしちゃったんだって、想像したくもないけど察してしまった。
白岩瑠姫
翔也が心臓移植の覚悟ができるように……背中を押すつもりでした
與那城奨
あの、瑠姫は何を……
上司
翔也くんに、自分の体を触らせてたんだよ
與那城奨
そんな……
瑠姫は俯いて震えていた。
まさか、瑠姫がそんなこと……。するはずがないのに。

それを翔也が嫌がったかはともかく、確かに問題視されてもおかしくない状況だった。

瑠姫は、どんなつもりでそんなことを……。
上司
今回は翔也くんが嫌がってないから見逃そう
上司
ただ、これ以上子どもたちと危険な接触はないように
上司
ここで油を売る時間はない、もう戻りなさい
冷たくそう言われただけだった。
……いや、見逃してもらえただけ幸運か。

ゆっくり立ち上がった瑠姫と共に部屋を出る。短い説教だけど、何気にショックだよね、笑

扉を閉めると、瑠姫は目から涙をこぼした。
與那城奨
なんでそんなことしちゃったの?
白岩瑠姫
俺が過去に移植をしたことを話して……
白岩瑠姫
傷痕見せたら、触ってもいいですか?って、言われたから……
そっかぁ……。
そういう事情だったんだね。じゃあ瑠姫は悪気があったとか、そういうわけじゃないんじゃん。

とりあえず翔也にも事情聞かないとわかんないし、場合によっては瑠姫を担当から外すことになる可能性だってある。
悲しいし申し訳ないけど、子どもたちと俺らは、そんな深く関われるような関係じゃないんだ。

医師と患者。
言ってしまえば、ただそれだけの関係だから。
白岩瑠姫
本当にごめん、翔也を傷つけるつもりじゃなかったんだ
木全翔也
そんな……僕傷ついてなんかないです
瑠姫は涙目のまま翔也の元へと謝りに向かった。
全力で謝ってるけど、翔也はやっぱり嫌がってるとかっていうわけでもなかったみたい。

大丈夫ならそれでいいけど、本当は……なんてことはないといいな。
木全翔也
瑠姫くんが傷、見せてくれて、むしろ嬉しかったのに……
木全翔也
僕が子どもだから、病気だから、瑠姫くんが悪いってことになっちゃった
白岩瑠姫
違う、翔也は……何も悪くないから
翔也だって、戸惑うだろうな。
いつもの担当の看護師さんが泣きながら謝ってくるって……。


異変が起きたのは、そのときだった。


瑠姫が頭を下げたまま胸を抑える。
そのまま膝から崩れ落ちてしまった。
與那城奨
瑠姫、!?
焦って駆け寄って、瑠姫の体を仰向けにした。
瑠姫の目は空いてる、けど……。口をぱくぱくさせながら、真っ青な顔で助けを求めるようにこっちを見ていた。
與那城奨
瑠姫、聞こえてるかな?手ゆっくり握ってごらん
細くて頼りない手に力が入った。
……良かった、そこまで重症ではなさそうだな。

一時的に血圧が下がって力が抜けただけなのかもしれない。

だとすれば少し休めばすぐに回復できるはず。
木全翔也
瑠姫くん……?
與那城奨
翔也ごめんね、瑠姫大丈夫だからね
與那城奨
瑠姫〜、息苦しいかな、ちょっと体動かすよ
白岩瑠姫
はぁ、はぁ……
服に手を入れて直接胸を触る。
かなり頻脈だけど……血圧下がってるし、逆にこれくらい動いてくれないと。

唇や爪の色も徐々に戻ってきていた。
……平気そうだね。一時的にふらっと来ちゃっただけなのかな。
精神的にもかなり乱れてるところだったし、疲れとかストレスとか、体の不調にはいろんな原因が考えられる。

……何も病気の再発だなんて、すぐに焦る必要なんてない。
白岩瑠姫
……すみませ、落ち着きました
與那城奨
体起こすよ
瑠姫の背中に手を入れてゆっくり起き上がらせる。
また顔からさっと血の気が引くけど、すぐに血色が戻ってきた。

……迷走神経反射かもな。
木全翔也
瑠姫くん……病気、?
與那城奨
大丈夫だよ、完治してるから、ちょっと疲れちゃっただけだと思う
木全翔也
でも……治っても、再発ってするんでしょ?
翔也の純粋な瞳。

治ったと思ったら別の場所に疾患が見つかったり、再発して合併症まで患ったり。
そういうことばっかりの世界で生き続けてる翔也には、そう簡単に大丈夫って言葉は効かなかった。
與那城奨
翔也も疲れちゃうから、もう寝な
與那城奨
なんかあったらナースコールね
木全翔也
はぁい
このままPICUにいたところでよ。
なんかあって翔也に心配かけるのも嫌だから、二人でPICUを後にした。

瑠姫が立ち止まって顔を抑える。

しょうがないよ、ここで泣き出したって。
白岩瑠姫
翔也のこと、励ましてあげたかったのに……
白岩瑠姫
結局迷惑かけて、心配もかけて、不安にさせた……
黙って背中をさすった。
俺にだってもう、言えることはないんだ。

俺と瑠姫だって、たまたま同じ病院に入院して、同じ病院で勤務してるってだけ。

深い関係になることのなにが悪いんだろう。
患者と医師、患者と看護師、患者同士、医師と看護師……。
どんな関係であったって、人と人ってことには変わらない。

深い絆を育むことが子どもたちの安心にも繋がるものなんだけど、どうもそう簡単にはいかないみたいだ。

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