だって私がいくら「練習しようよ」って誘っても
誰も聞いてくれなかったのに
その後に温斗君が注意したら、皆従ってくれて...って、
温斗君が注意するのは私の注意が誰の耳にも届かなかった後だった?
もしかして私の声を代弁してくれていた...?
ハッとして顔を上げる
斜め前方には、ただ前を歩く気だるげな背中。
いや、あの頃いじめっ子な温斗君がそんなことするわけないか
なぜか言葉を止めてしまって、私は静かに待つ
温斗君は息を吐いて、咳払いをして言葉を続けた
その意味がわからず、戸惑ったその時
私は強く腕を引かれ彼の両腕の中に抱きしめられていた
体を離した彼の鋭いけどどこか優しい視線に
訳もわからないくせに私は頷いてしまっていた
いじわるな笑みを残して先を歩いて行ってしまった
心臓が鳴り止まないよ...














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!