第4話

跡取り息子と使用人
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2024/06/13 10:00
大塚村村長の屋敷の奥座敷
襖は閉めきられ、夕暮れの暗い時間に明かりを灯さず薄暗い部屋の中
闇奏 亥来馬
、、、
その中に亥来馬がいた
床一面に書物や紙が散らばっている
それらは全て『闇奏家』についての書物だ
闇奏 亥来馬
父様、母様、、、
闇奏 亥来馬
ッ、、、
闇奏 亥来馬
!?
亥来馬は急に部屋の明かりを付け書物を隠した
ギシギシ 誰かが亥来馬の部屋に近づいてくる音がする
亀篠
亥来馬、夕飯の時間よ
闇奏 亥来馬
今から参ります、義母上
亀篠
えぇ、待っているわ
足音は遠ざかっていく
闇奏 亥来馬
はぁ、、、もうこの時間か、、、
亥来馬は毎日2回の食事の時間が嫌いだ
闇奏 亥来馬
行かなきゃ、、、
苦悶の表情で広間に向かう
闇奏 亥来馬
失礼します、亥来馬です
蟇六
亥来馬か、ほら早く座りな
そこには3人がいた
小太りな体型に不似合いな豪華な着物を着ている義父
亀篠
今日は山菜の天ぷらよ
ヒョロリとした狐目でこれまた豪華な着物を着た義母
そして
亀篠
あんた、早く亥来馬にお茶を注ぎなさい!
花奏 藍音
はい
広間の端で人形のように気配を消し、生気の無い目をした藍音
闇奏 亥来馬
、、、
亥来馬は叫びだしそうな心を抑え、無表情で座る
蟇六
おい、もう少し米を多くしろ!
花奏 藍音
はい
亀篠
ちょっと、モタモタしないで早くして!
花奏 藍音
すみません
亀篠
たっく、使えない奴ね
闇奏 亥来馬
、、、
文句も言えず、ただ黙っているしか出来ない自分を殴りたくなる
なぜ、亀篠や蟇六の甥にあたる藍音がこんな仕打ちを受けているのか
亀篠は、藍音の父親の姉だ
藍音の父親が継ぐはずだった大塚村の村長の座を奪いとって夫の蟇六に渡した
そして、亀篠夫妻は藍音の両親を虐めていた
その後、藍音の両親は死んだ
藍音は亀篠夫妻に引き取られ使用人以下の扱いを受けている
亥来馬は育ててくれた亀篠夫妻に何も言えない
ただ黙るだけ
だから、亀篠夫妻から見えないところで藍音に優しくしている
それしか、恩返しが出来ない
闇奏 亥来馬
(いつか、いつか絶対に復讐してやる!)
亥来馬はこの時間が嫌いだ

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