第8話

【放課後、密室、先輩とひみつ】6
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2019/03/28 02:53 更新
しばらく練習を手伝って、「そろそろ終わりにしよう」と声をかけられた頃には、辺りは真っ暗。二時間も経っていた。
そんなに経過していたなんて、全然気づかなかった。
先輩の表情は、私が初めて見た頃のものと同じで、ただ見とれてしまっていたから。
あの日の先輩は、見間違いじゃなかったんだ……。
浅野大翔
浅野大翔
帰り、送るから
部室にボールを片付けながら、浅野先輩が私を見ないまま話しかける。
暗いから見えにくいけど、毎日使っている場所だから、大体の位置は分かる。
切れた蛍光灯を顧問の先生が替えてあげると言ってくれた時から、優に一ヶ月は経過している。
西川梨子
西川梨子
えっ、そんな、大丈夫ですよ。先輩、電車通ですよね? うち、駅の反対方向だし、そんなに近いわけじゃないし悪いです……
浅野大翔
浅野大翔
遠いなら、なおさらだろ。暗い中で女の子ひとりで帰したくないし
……。今、なんて言った?
聞き違えでなければ、浅野先輩が私を女の子扱いしたような……。
浅野大翔
浅野大翔
普段は、知宏と一緒に帰ってんでしょ
ありがとうを言いたかったのに、先輩が話し始めたことでタイミングをなくしてしまった。
西川梨子
西川梨子
だ、だから、いつも一緒にいるわけじゃないですって……
代わりに口から出てしまったのは、こんな可愛くない言葉。
言わなきゃ、ありがとうって……。
西川梨子
西川梨子
先輩、あの……
浅野大翔
浅野大翔
あれ?
声を出したのは、ほとんど同時だった。
片付けも終わり、先輩が先に部室を出ようとドアノブを回した時。ガチッと、硬い音がした。
西川梨子
西川梨子
……どうしたんですか?
ドアノブをつかんだまま固まる背中に、たまらず声をかける。
先輩は心なしか青ざめた顔で振り返り、小さく告げた。
浅野大翔
浅野大翔
鍵、閉められた
少しの間理解が出来ずにいた私は、何度か瞬いて、
西川梨子
西川梨子
……え、えー!?
久しぶりに、大声を上げた。







西川梨子
西川梨子
誰かー! いませんかーっ!?
部室内にある壁掛け時計で確認した時刻は、午後十時。
ここに閉じ込められてから、すでに一時間以上過ぎていた。
電灯のないこの部屋では、唯一窓から差し込む月明かりだけが頼り。
その頼みの綱の窓ですら、はめ殺しになっているタイプのもので、人が手で開けることは出来ない。
浅野大翔
浅野大翔
もう諦めたら? さすがに、この時間まで残ってるバカはいないって
部室には、大きいテーブルが一台と椅子が六脚。それと、部員各自のロッカーに、カゴに入ったサッカーボール。ユニフォーム。タオルに、ヤカン。
他に余計なものは何もない。扉を開ける、鍵すらも。
外から施錠された扉に向かって叫ぶ私に、先輩はのんびりと椅子に座ってあくびをしながら言う。
西川梨子
西川梨子
せ、先輩ももっと焦ってください……! 開かないんですよ、扉!
浅野大翔
浅野大翔
外からしか閉めらんない鍵だからねぇ
西川梨子
西川梨子
何でひとりでに閉まったりするんですか……!
浅野大翔
浅野大翔
いや、さすがにやったのは人間でしょ。夜間警備員いるんだよ、この学校。知らなかった?
西川梨子
西川梨子
し、知ってますー! だからそれが何でっていう話を……!
浅野大翔
浅野大翔
いつもは鍵閉めてる時間だったんじゃん?
先ほどから何度目だろう、このやりとりは。
パニックになる私と、のんきな先輩。ずっと繰り返しの平行線。
この状況でさらに、ふたりともスマホが入ったかばんは部室の外というおまけ付き。
浅野大翔
浅野大翔
仲良くしようよ、梨子ちゃん。どうせ、朝までふたりきりなんだから
月明かりに照らされて、浅野先輩がニヤリと笑った。
朝まで、世界で一番苦手な人と。
……ふたりきり?
頭が真っ白になって、脳内で反芻させる。
浅野先輩と、このままふたりきり。それは、つまり。
西川梨子
西川梨子
いっ……嫌です──!!

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