久々のジャムつきパンを頬張る中。
急に立ち上がったおじいちゃんに、全員分の視線が集まる。
キッチンに向けて一歩進むと、こちらの方へ振り返った。
即座に反応する僕とぼんさん。
現実世界ではお世話になっていたので、恋しくなっていたところだったのだ。
同じく現実世界の人間であるおじいちゃんは、僕らの食いつきように納得したように笑って頷き、おんMENへ向き直る。
おじいちゃんがキッチンに向かうと、コーヒーを淹れ始めた。
無駄のない動作でコーヒーを淹れていくおじいちゃんを尻目にそんなことを言っていると、正面から小声の会話が聞こえてきた。
首を傾げるおんりーに説明を試みるも、うまく言葉が出てこない様子。
思わずぼんさんと顔を合わせて頬を緩ませる。
そのとき、キッチンからカチャっと食器が触れる音がした。
おじいちゃんがコーヒーを淹れ終わったのを感で察知したので、僕は席を立ち上がる。
しばらくの間、僕らはコーヒーの香りとともに、穏やかな空気に包まれた。
コーヒーを飲み終わった後。
ジャムへの感謝の意思を表明するべく皿洗いを引き受けた僕らは、キッチンに並んで立っていた。
そんな事を話しながら、着々と皿を洗い進めていく。
二人いるので、僕が洗ってぼんさんが拭くという分担作業も成立している。
僕らはジャムやコーヒーの感想を言い合いながら、着々と洗い進めていった。
皿が重なる音が、どこか心地いい。
洗い始めてから数分後。
洗う枚数がそもそも少なく、二人がかりだったというのもあって、皿洗いはすぐ終わった。
ぼんさんが最後のコップを静かに置いた音が、静かなキッチンに響く。
自分の手を洗っていると、聞き捨てならない内容が聞こえたので振り返る。
そんな会話を交わしつつ戻ると、そこにはおじいちゃんしか居なかった。
僕が指さしたのは、ここから廊下に出てすぐにある扉だった。
ここには仕切りがないので、この会話はおそらく書斎に筒抜けだ。
おじいちゃんが頷いた事で、僕はおじいちゃんの喋り方がおじいちゃんのままな理由を察した。
即答だった。それほどまでに美味しかったのだ。
笑顔で頷き、キッチンへ向かうおじいちゃん。
待つ間特にすることもないので、今度はリビングのソファに座り、残ったコーヒーの残り香を堪能することにした。
ぼんさんも座り、窓から見える庭をぼうっと眺めた。
窓から差し込む光は温かく、僕はそっと目を閉じた。
どのくらい経っただろうか。
静かな時間が流れる中、玄関の方から芝生を踏み締める音が聞こえてきた。
コーヒーカップを傾けながら、ぼんさんが言う。
しかしその足跡は、散歩帰りのようなのんびりしたものでは無くて。
おじいちゃんの眉が訝しげにピクリと動き、そのままカップを置いた。
カチャっという音が鋭く響く。
3人分の視線が集まる中、玄関の扉が蝶番が悲鳴をあげそうな勢いで蹴り開けられる。
滅多に聞かないほどの大きな声と共に、おんりーが中へ飛び込んできた。
彼の背には、そんなに体格の変わらない少年が背負われている。
全力疾走の勢いを殺しきれず、おんりーは床を靴の踵で削りながらリビングの中央まで滑り込んできた。
表情はいつもと同じように見えるが、瞳の奥に驚きと焦燥が見え隠れする。
おんりーの呼吸は荒いが、その足取りには微塵の揺らぎもない。
数十キロの人間を背負って、森の斜面を飛ぶように走ってきたのだろうが、改めておんりーの体力とスタミナを思い知った。
おんりーの肩でぐったりしている男の子の顔色は、だいぶ悪い。
先程までリビングを支配していたコーヒーの穏やかな香りが、森の湿り気と鉄の匂いに、瞬時に上書きされた。

※1話(prologue入れるなら第2話)のあとがき参照アンケート
長さどんなですかー?
長すぎるって!!
2%
ちょうどよくなったわ👍
49%
まだ短いんだが?
49%
投票数: 41票
追記
なんかR18なりました。解せぬ。
追追記
↑直りました。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。