つんと鼻の奥を刺す匂いに、顔をしかめつつ。
僕は、現実世界での知識をフル活用するべく、全てのリソースを思考に注ぎ込んだ。
すぐに響く鋭い声に、遠くから聞こえる大きな声。
口調が素に戻っているのを見るに、おじいちゃんも余裕がないのだろう。
息がだいぶ整ったおんりーがぼんさんに少年を預けたのを横目で確認しつつ、僕は仮眠室へ急いだ。
先程までのゆったりとした空気が場違いかと思うほどに、全員の動きに無駄がなかった。
空気が緩んだ仮眠室で、お互いを労う声が飛び交う。
久々に医療関係の知識を引っ張り出したが、何とかなったようだ。
血のついたタオルをバケツへ放り投げ、僕はもう一度ため息をついた。
数分後。
おんりーが、血が垂れたリビングを掃除する、と言って仮眠室を後にした。
MENはタオルを洗濯機で洗っている。
最近作った物だそうだ。
現実世界にあるような物をこの世界で次々と再現していくMENには、毎度のことながら驚かされる。
おじいちゃんはあちこちに散らばった包帯を片付け、ぼんさんは窓を全開にして空気を入れ替えている。
みんなが片付けに勤しむ中、僕はベッド付近の床に座って、思考を巡らせていた。
喜びや疲労感から解放されて、冷静になってみると、この状況がおかしい事に気づいたから。
すると、隣に誰かが座ったのを気配で察知したので、顔を上げる。
座ったのはぼんさんだった。
一人で考え込むより、言葉にしてまとめたほうが何か分かることもあるかもしれない。
そう思った僕は、先ほどから脳を支配している違和感について話してみた。
首をかしげるぼんさんに、ハッキリと告げる。
さっきから聞いてたのは知ってたけど………。
そこからおじいちゃんは、この世界の治癒法則を語ってくれた。
笑みをこぼした瞬間、部屋のドアがガチャリと開いた。
思ったより最後の方からで安心する。
ゲームだのHPだの、メタい話しかしてなかったから。
慌てて振り返ると、ずいぶん顔色の良くなった少年の手が、ピクリと震えた。
みんなベッドの側に集まり、遠慮がちに顔を覗き込む。
わずかに開いた唇から、掠れた吐息が零れ落ちた。
前回のアンケ↓














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。