長尾「終わったー!」
道枝「あなたちゃん一緒に帰りません?」
「あー、…ごめん!今日用事あって」
長尾「みっちー、俺が一緒に帰ってもええでっ」
道枝「なんでそんな上からやねん」
「じゃあ先帰るね、お疲れ様っ」
そう言って、逃げるように楽屋を出た。
西畑「あなたっ、待って」
「大ちゃん?どうしたの?」
そんな私を追いかけてきた大ちゃん。
西畑「あなた、なんかあった?」
「え、…なんで?なにもないけど、」
西畑「元気ないような気したから」
大ちゃんは昔からなんでもお見通しだ。
西畑「なんかあったらいつでも言いや」
だから、私の嘘にもきっと気づいてるけど。
気づいてないふりをして優しい言葉をかけてくれる。
そんな大ちゃんに私は何度も救われてきた。
「うん、ありがとう」
西畑「気をつけて帰るんやで」
「わかった」
西畑「アメちゃん渡されてもついてったらあかんで」
「それ、はたちの人に言うセリフ?」
西畑「まあとにかく気いつけてな」
「はいはい、おにーちゃん」
西畑「誰がお兄ちゃんや笑」
心配性の大ちゃんはいつも私の姿が
見えなくなるまで見届けてくれていた。
それは、今でも変わらなくて。
角を曲がるところで振り返ると、
やっと楽屋に戻っていく姿が見えた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。