山の少し切り開かれた、俺達だけが知ってる秘密基地で凪砂がそう言った
たく、懲りねーな
俺がそう言うと、凪砂はいつものように拗ね始めた
そうだ、
最強と呼ばれる人は1人で圧倒的な力を持っているから最強なんだ
俺は座っていた丸太からピョンッと飛び降り、凪砂に背を向けて歩き出した
俺は振り返らず、その場を後にした
俺はポケットからスマホを取り出し、凪砂とのトーク画面開いた
あなたの下の名前が居なくなった秘密基地に1人でいると、ピロンっとスマホがなった
14:53
あなたの下の名前からのメールだった
相変わらず朝の天気予報は欠かせないのな
俺はそのメールを既読だけして何も返さなかった
山の中だから、むさ苦しいセミの鳴き声が頭に響く
LINEしても返事が来ない
いつもはすぐに返ってくるのに
俺はさっきまでいた場所に戻ろうとした
これは俺の勘だ
今はそっとしておこう
俺は後悔した
この時戻って、
凪砂と一緒に帰ればよかったと
俺は窓の外が見えない程の雨に驚いていた
気づけば足は階段をおりて、玄関まで進んでいた
エプロン姿のお母さんが心配した様子で俺に話しかけた
俺は靴紐をキュッと結んで、お母さんのカッパを着て外に出た
ずっと嫌な予感がしていた
歩いていた足は早歩きになって、
気づけば全力で走っていた
被っていたフードはめくれていて、髪も顔もびしょ濡れだった
でもそんな事は全く気にならなくて
必死に、無我夢中で走った
そう遠くないその場所が、異様に遠く感じた
やっとの思いで着いたけど、そこには誰も居なかった
冷静に考えてこんな大雨なのに帰らないなんておかしいだろ
でもなんか、
すっげぇ安心した
するとピロンっとスマホがなった
凪砂か…?と思いながら通知を見ると…
怪獣…?
そんな感じはしないんだけどな〜
一応急いで帰るか
人の声…
どこからだ…?
もしかして怪獣に遭遇した…?
周辺を歩いて声の主を探した
結構深い所まで来ちまったな…
すると、そこには小さな女の子と見慣れた人物がいた
俺は急いで凪砂の元へ向かった
俺はびしょ濡れだけど…と言いながら来ていたカッパを女の子に着せた
そう言えばと思い、女の子を不安にさせない為、渚に耳打ちをした
俺は自分達が何処にいるのかを確認する為にスマホを取り出した
電源ボタンを押すが画面は真っ暗のままだった
何度も押すが結果は変わらず…
沈黙が続く
パキッと小枝が折れる音が聞こえた
凪砂が女の子を抱っこした
直ぐに逃げれるようにってか
やばいな…
ただの勘違いであって欲しいけど…
そんな俺の望みを踏みにじるように、
そいつは現れた
俺達の数倍はあるガタイで、見下ろされる
そいつは紛れもない怪獣で、恐竜型の怪獣だった
展開が進み始めましたねぇ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。