第30話

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2,905
2020/08/11 17:00
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未だに車の免許を持っていない私は
だいたい最寄りから電車に乗っていく。
この時間帯は出勤やら登校やらで人が多い。

朝から大人気ない席取り戦争が繰り広げられている。
私はまあ立っていても何の支障もないので
ドアの横にあるポールに捕まっている。

なぜつり革じゃないのかって?
そ、それは、掴めないからです。

3個駅を飛ばしたら次が降りる場所。

人を掻き分けようやくホームに出る。
人の並に呑まれないように必死に歩く。

ピッというICカードの決済の音がようやく
平日でこれから仕事だと言う事を告げている。
街の中にそびえ立つビルの間を縫って、
編集部のあるビルへやってくる。

『 よし、』

これは私の気合い。
部屋に入る前に気合を入れて、仕事という事を
自覚してから取り掛かることにしている。
自動ドアが開いて1歩踏み出すと、聞き慣れた声が聞こえた。

正「 おはよう、あなた 」

『 ああ、正門。おはよ。』

構わずに歩くもすぐに追いつかれて、
横に並ぶ形になる。
エレベーターのボタンを押して降りてくるのを待つ。

正「 今日は平和な1日やなあ、
朝から走り回らんでええもん 」

『 小島デスクやから、いつまた仕事が
飛んでくるか分からへんよ』

正「 俺は別にええねんけど、」

『 私嫌やし、なんでいつも正門と私セットなのか
分からへんのやけど、』

正「 そりゃ、同期やからやろ? 」

『 んー 』

そんな事をしているうちにエレベーターの扉が
開く。
ササッと乗り込み六階のボタンを押す。
''上に参ります''
という女の人の声と同時にエレベーターが
また動き出す。

正「 まあ走り回らくても、やり直しやり直しで
ペンを走らせなあかんねんけどな 」

『 何上手いこと言うてんの笑 』

正「 あ、笑った笑 今日急いで家出てきたやろ 」

『 なんで分かるん。』

正「 幼馴染の勘ってやつ?笑
あなたは笑ってた方がええねんから 」

『 なに急に 』

正「 そう思ってるから言うてるだけやけど? 」

顔にそんなに出てたんだろうか?
正門はこの頃少し、おかしい時がある。
まあいつもか!



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