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案の定、私の机の上は付箋だらけの書類の山。
『 あぁ、もうまたや… 』
ペラっと1枚見てみると、そこにはいつもは無い
赤色の文字がビッシリ詰まっていた。
『 え、なにこれ、訂正箇所全部印打っといてくれてるんやけど 』
正「 え、見せて 」
横からスっと紙が持っていかれる
『 これ全部編集長が? 』
正「 しかも凄い的確 」
今までこんなこと一回もしてもらった事
なかったのに。
『 よし、今日も頑張ろ 』
正「 俺のもこの前より多いな 」
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『 終わったあ 』
時計を見るとまだ7時。
正「 俺も終わった! 」
『 今日は早く帰れるやん、』
誠也くん、もう帰ってるんかな
今日は何食べたいって言うんやろ
正「 今日ちょっと飲んでかへん? 」
『 あーごめん、はよ帰らなあかんからさ 』
正「 え、あー…そうなん 」
『 ごめんな、じゃあまた明日 』
正「 送ってこか? 」
『 ううん、大丈夫! お疲れ様でしたあ 』
早く帰る早く帰る…
自然と早歩きになって、思ったより早く
駅に着いた。
幸い、電車の座席はまあまあ空いていて、
座ることが出来た。
うとうとしながら寝過ごさないように
必死に目を閉じるのを我慢しているうちに
最寄りに到着。
改札を出るとそこには
「 おかえり 」
『 誠也くんっ 』
思わず、飛びつく私を笑いながら受け止めて
くれて
「 随分眠たそうな顔してたのに笑 」
『 眠たい… 』
「 ほなはよ帰ろか 」
『 うんっ 』
夜でも夏のじめっとした暑さ。
じっとしているだけでも汗が吹きでる。
でも、隣に大好きな人がいるだけでそんなのは
全て吹き飛んで、他愛もない話をしながら
2人で帰り道を歩く。
「 へぇ、やから今日は早いんやね? 」
『 そう、今日は1人で終わらせれたからさ 』
「 今日は? 」
『 あ、たまに正門が手伝ってくれる時が
あるんやけど 』
「 あのさ、前からちょっと思っててんけど 」
私の話の途中で誠也くんが割り込むように
口を開く。
『 ん?なに 』
「 正門って、あなたちゃんの事、好きよな 」
『 …え? 』
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。