ホームルームが終わり、机の中身をカバンに閉まっていると視線を感じた。
彼女たちが私を見ながら笑っている。その手には携帯電話がにぎられていて、きっと裏提示版でも見ているのだろう。
悪口が沢山書かれていることはわかっている。
そもそも私と大塚さんでは、いじめられ方が違っていた。
大塚さんへのいじめには直接攻撃する行為も含まれていたけど、私の場合は完全な"無視"だ。
彼女たちは私のことを"幽霊"と呼んでいるみたいで、まるでいない物のように扱っている。
私が話しかけても影でコソコソ笑っていた彼女たちが、あの切り裂かれたぬいぐるみのように、今後何されるか分からない。
そう考えるだけで血の気が引く。
彼女たちが教室を出たのを確認してから、裏提示版にアクセスする。
直ぐに画面が黒く塗りつぶされ、白い文字で"裏提示版"の文字が浮かび上がった。
このサイトは基本的に毒を吐く場所だから、気味が悪くても暗い雰囲気で作られている。
おそるおそる1番上にあるすレッグをクリックした。
あなた「なっ…」
裏提示版に乗せられていたものは、紛れもなく私の写真だった。盗撮とかじゃなく、私もこれに見覚えがある。
仲が良かった頃にみんなで撮った変顔の写真だ。それが私の部分だけ切り取られて、晒されている。
『気持ち悪い』『やばすぎ』『ウケんだけど』『ブスすぎでしょ』
その画像に対してたくさんの心無い言葉が投稿された。
愕然として、力の抜けたてから携帯電話が滑り落ちた。
すると、
「ねぇ、落ちたよ?」
誰かにこれをかけられたけど、返事をする気がない。このまま呼吸がとまってしまいそうだ。
大塚さん「……なに、これ」
私の携帯を見ながら顔を顰めている大塚さんが視界に入り声をかけてきたのが彼女だったことに気づいた。
大塚さん「これ……吉田さんだよね。"あいつら"にされたの?」
アイツらとは大塚さんのことをいじめていた彼女たちのことだろう。
仲が良かった頃、私がこの写真をSNSにのせた記憶も、彼女達の誰かが載せていた記憶もない。だから第三者が勝手にどこからか悪用したとは考えにくい。
それに私にこんなことする人なんて他に思い当たらない。
大塚さん「あのさ、もうこのサイト見ない方がいいんじゃない?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。