sideラウール
1人でベッドに潜り、思い出す。
胸のこの痛みは、もう、貴方が最後かもしれない。
めめに話しかければ、いつも笑顔で、
俺の話を聞いてくれる。
不意に俺のことを可愛いと言ったり、
微笑まれたり。
ほらね。もどかしい。
だってさ、付き合ってるのにめめといる時間は少ない。
でも、これ以上欲しがったら、
容易く、崩れてしまうから。
どうしたら、俺は寂しくならないのだろう。
もっと、言葉にしなきゃいけないのかもしれない。
「好き」って言えたら、どれだけ楽か。
ほら、また力んだ。また息んだ。
やっぱり、言えそうにない。
「一緒にいたい」と言えたら、どれだけ楽か。
まだまだ、一歩も踏み出せてないな。
どっちもおいしいはずなのに。
どの果実も同じような味しかしないな。
なんなんだ。
思い出せば、思い出すほど苦しくなる。
貴方が眩し過ぎるが故に。
美しい太陽みたいだ。俺の側でさ。
なぜだか、涙が流れる。
泣いたのは、決して貴方のせいではないよ。
嘘じゃないよ。
好きじゃない、と
割り切るのは、別になんともなく生きていけるよ。
嘘じゃないよ。
寂しいときに、
助けて欲しいの。温めて欲しいの。
その感情がさ、俺の弱さだ。
隠したのは、嫌われたくないからじゃないよ。
嘘じゃないよ。
俺のことをもっと大事にしてくれると
夢見たのは決して貴方のせいではないよ。
嘘じゃないよ。
これじゃ、夜も眠れないよ。
心配ないよ。
嘘じゃないよ。
またそうやって、嘘をついて。
行ったり来たりの思いも
まとまりきらない愛も
悲惨に沈むなら。
嘘じゃないよ。
笑ってるのは無理をしている訳ではないよ。
嘘じゃないよ。
嘘じゃなくないよ。嘘じゃないよ。
Mrs. GREEN APPLE
「嘘じゃないよ」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。