本編後ストーリーです。
あれを見せられたら書きたくなるんです…
※V3のネタバレ含みます
マフィア基地 本部
神崎Side
地下の一室で、銃声だけが私の耳に届く。射撃訓練、と言う名の憂さ晴らしだ。何度も的を撃ち抜き、リロードして、また撃つ。その繰り返し。
ある日、私は知らない場所に連れていかれ、したくもないゲームを強要された。結果としては首謀者は特定できたしこうして自身の生活に戻れた。…ただ、失ったものは多い。
私は本業であるマフィアの仕事に戻れた。最原は探偵業を自分の意志でし始めた。春川も暗殺者として今も生活している。何なら春川はたまに私の元にやってくる。夢野はマジシャン…魔法使いとして活躍してるらしい。
………私の問題は、【超高校級の総統】と呼ばれていた王馬小吉。あのコロシアイで大掛かりな作戦を立て私達を混乱させた。…同じ参加者であり、同時に、私は王馬の恋人だった。
あの時は得意になってしまった無感情を貫き何とか耐えたが、こうして普通の生活をしていると喪失感と、もう王馬が居ないこと実感する
突然声を掛けてきたのは部下。気配が敵意や殺気じゃないから何となく分かってはいたけど、それでもノックは欲しい
あの日のことはどんなに頑張っても忘れられない。
それでも、仕事と切り離すことくらいはできる。私は部下と共に倉庫へと向かった
昼
探偵事務所
珍しく仕事が早く終わったから最原の事務所に来てみたが…
気を遣われている気がする。最原は気まずそうにして私と目を合わせようとしない。全く…そんなに気を遣わなくてももう吹っ切れてるのに
一口、珈琲を飲み、最原を見た。目は合わせようとしない。
…王馬のこと気にしてるのんだろう。過ぎたことをどうこう言っても仕方ない。あんな状況だったし「返して」とも「やり直したい」とも言われない。
仕事上、人の死は散々見てきた。まぁ……あの現場は私でも嫌になったけど…
…どんな職であっても、人である以上、無意識でも故意でもストレスは溜まるものだし、どこかで発散しないとそのうち壊れる
怯えられるのが分かっていたから初めは自分のことは話さずにひたすら話を聞いていた。春川なんて保育士と自分で言っていたし……
…でも、研究教室を見られたときはほんとにどうしようかと思った。言い訳のしようがなくて、どんなに考えても自分の才能を言わざるを得なかった。
マフィアだから、と言った時の皆の顔は一生ものだろう。忘れられそうにない。だから春川の正体を知った時は親近感が沸いた。変な話だな…
まぁ、そうだろうとは思っていた。
…王馬には会えないし、というか会う手段がない。死んだ人間を生き返らせるなんてモノクマが動機に使っていたあの本くらいだろう。まぁ、本当かは分からないが。
死んでしまったのなら、文句を言ったって仕方ない。本人が帰ってくるわけでも言葉を返してくれるわけでもないのだ。でもまぁ……最後に一言くらい残してほしかったのは確かだけど
会いたい、もっと話したかった、はもう叶わない
最原の言葉に軽く頷き、事務所を出た
夕刻
NoSide
神崎は最原の事務所を出て街中をゆっくりと歩く。
日も落ち、オレンジ色の空とそれを侵食していく青黒い空。仕事から帰る人も多くなり、歩く道は狭くなっていく。
人の声、雑踏、ざわめきの音が段々増えていき、呟きすらかき消すほどに
神崎が向かう先は組織。時計や携帯を見ながら歩く。
ある角で曲がり路地裏を通って基地へ向かう
基地
神崎Side
…そう、ただ早く着きすぎただけ。
……早く着いたって仕事が早く始まるわけでもない。でも、何かしていないと落ち着かない。……いつからこんなに落ち着きがなくなったのだろう
今時そんな古典的なメッセージの送り合いをする相手は居ないのだけど?
部下から手紙を受け取り開けると見慣れた白と黒の市松模様にあの組織のシンボルのサイコロのイラストが描かれた封筒が入っていた。……二重構造?
……その封を切ると、『今夜攫いに行くから』とだけ書かれた紙が入っていた。悪戯?あいつは居ない。でもこんな真似するような奴は身近に居ない
嫌な予感…というのかな。とにかく今行かないと駄目な気がする、と何故か思った。こんなに好きだったっけ、あいつのこと。
学級裁判を重ねるごとに嫌いになってたのにいつの間にか惚れ込んで……
もし本人なら一発くらい許されるだろう
外に出ると室内とは違って寒い。この時期にスーツだけは流石にか…
でも、この手紙が確かなのか調べる必要がある。伝のある情報屋にDICEのことは聞けた。ただ……王馬の情報だけ出てこなかった
…あいつのことは本当に分からない。何が嘘で本当なのか、あいつそのものが嘘だという可能性も出てきたな……
幻覚…?
突然後ろから声が聞こえ振り返ると見慣れた…会いたかった男が居た
…そして、何を血迷ったのか私は自分の手首をナイフで切った
……うん、夢ではないし幻覚でもなさそう。
王馬が駆け寄ってきて私の手首を止血している。目の前にいる王馬の手の温度も驚いている表情も現実のようだ。
会ったら文句の一つや二つでも言ってやろうと思ってた。なのに……
涙を流し始めた私に動揺している王馬。なんとか抑えられると思ったのに一滴零すと止まらなくなった。
…っ……この男の所為……全部
お得意のからかいを引っ込め、少し不安そうに聞いてきた王馬。こいつって、人の心配できるんだ…?
少し…少しだけ得した気分になった
王馬Side
最初は手紙なんて送る気はなかった。そんな柄でもないし。
でも、突然目の前に現れたら刺されそうだと思った。神崎ちゃんならやりかねない。そう、ちょっとした好奇心、そして配慮。オレって優しいでしょ?
……手紙を持ったまま必死で走ってオレを探してる神崎ちゃんを見たらいつもはスラスラと出てくる嘘や誂いを言えなくなった。言ったら多分……嫌われる。神崎ちゃんにちゃんと好かれてるって十分わかってるし、言う必要もない。
……泣くとは思わなかった。神崎ちゃんの泣くところなんて見たことなかったし何なら泣かないとすら思ってた。あのコロシアイで人の死を見て涙一滴も見せなかったから。……なのに…
そう言って泣きながら睨んでくる神崎ちゃん。胸が痛いと同時に、嬉しくもあった。神崎ちゃんがオレに興味無いって言ってるのに、こんなにオレを想ってくれてるから。
……オレだってちゃんと想ってるよ?ただ…愛の言葉より嘘や誂いが先に出るだけ。それがオレだからね
ほんと、恋愛に関しては鈍いというか天然というか…
経験がないし仕方ないとは思う、でもその2択はないでしょ…
そう、それでいて。そうやって冷たい視線を向けてオレだけに向けてよ。その方が神崎ちゃんらしい
神崎ちゃんは何も言わなくなった。でも分かる。神崎ちゃんはオレの発言が嘘か本当か分かってる。最原ちゃんみたいになってきたな…
神崎ちゃんの手を取り、歩き始める。久しぶりに触れた手は少し冷たかった。こんな寒空の下でオレを探そうとしていたんだからそりゃそうか
…ね、神崎ちゃん。また、これで君と遊べるね。
愛してるよ、あなたちゃん












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。