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第2話

王馬小吉 【帰還の一言を】
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2026/01/27 16:18 更新
本編後ストーリーです。
あれを見せられたら書きたくなるんです…



※V3のネタバレ含みます






マフィア基地 本部
神崎Side
神崎あなた
………!
地下の一室で、銃声だけが私の耳に届く。射撃訓練、と言う名の憂さ晴らしだ。何度も的を撃ち抜き、リロードして、また撃つ。その繰り返し。

ある日、私は知らない場所に連れていかれ、したくもないゲームを強要された。結果としては首謀者は特定できたしこうして自身の生活に戻れた。…ただ、失ったものは多い。
神崎あなた
…集中力も切れてきたな……
私は本業であるマフィアの仕事に戻れた。最原は探偵業を自分の意志でし始めた。春川も暗殺者として今も生活している。何なら春川はたまに私の元にやってくる。夢野はマジシャン…魔法使いとして活躍してるらしい。

………私の問題は、【超高校級の総統】と呼ばれていた王馬小吉。あのコロシアイで大掛かりな作戦を立て私達を混乱させた。…同じ参加者であり、同時に、私は王馬の恋人だった。

あの時は得意になってしまった無感情を貫き何とか耐えたが、こうして普通の生活をしていると喪失感と、もう王馬が居ないこと実感する
ぁの…
神崎あなた
…何?
というか、ノックくらいして。下手したら君を撃ってたよ
突然声を掛けてきたのは部下。気配が敵意や殺気じゃないから何となく分かってはいたけど、それでもノックは欲しい
部下
すみません…
倉庫にある火薬なんですけど…
神崎あなた
あぁ…それなら…
あの日のことはどんなに頑張っても忘れられない。

それでも、仕事と切り離すことくらいはできる。私は部下と共に倉庫へと向かった

探偵事務所
最原終一
はい。神崎さん、珈琲のほうが良かったよね…?
神崎あなた
ありがと、別にどっちでもいいよ
飲めないわけじゃないから
珍しく仕事が早く終わったから最原の事務所に来てみたが…

気を遣われている気がする。最原は気まずそうにして私と目を合わせようとしない。全く…そんなに気を遣わなくてももう吹っ切れてるのに
最原終一
…それにしても珍しいね、神崎さんから来てくれるなんて
神崎あなた
…なんとなく来ただけだよ
……最原は探偵業、順調そう?
最原終一
うーん……まぁ…程々だよ
僕にできることで最大限尽くしてるだけだから
神崎あなた
……そう、順調そうなら何より
一口、珈琲を飲み、最原を見た。目は合わせようとしない。

…王馬のこと気にしてるのんだろう。過ぎたことをどうこう言っても仕方ない。あんな状況だったし「返して」とも「やり直したい」とも言われない。

仕事上、人の死は散々見てきた。まぁ……あの現場は私でも嫌になったけど…
神崎あなた
そういえば春川は?
最原終一
春川さんも神崎さんみたいに、たまにここに来るよ
忙しそうだから頻繁には来てないけど
神崎あなた
…最原、何かあったら頼りなよ
探偵業はストレス溜まる仕事だからね
…どんな職であっても、人である以上、無意識でも故意でもストレスは溜まるものだし、どこかで発散しないとそのうち壊れる
最原終一
心配してくれるの…?
…神崎さんの方が吐き出さないといけないのに
神崎あなた
……私のはただ引きずってるだけ
最原は現在進行系でしょ、仕事の愚痴くらいなら聞くから
最原終一
………変わったね、神崎さん
…初めて会ったとき何も話してくれなくて近寄りがたかったのに
神崎あなた
………嫌でしょ、マフィアがコロシアイゲームにいるの
…春川もだけど、裏社会にいたら嫌でも視線を感じるからね
怯えられるのが分かっていたから初めは自分のことは話さずにひたすら話を聞いていた。春川なんて保育士と自分で言っていたし……

…でも、研究教室を見られたときはほんとにどうしようかと思った。言い訳のしようがなくて、どんなに考えても自分の才能を言わざるを得なかった。
マフィアだから、と言った時の皆の顔は一生ものだろう。忘れられそうにない。だから春川の正体を知った時は親近感が沸いた。変な話だな…
神崎あなた
…で、ずっとそわそわしてるのは何で?
最原、そんなに落ち着きなかったっけ
最原終一
………王馬君のこと、どうするの
神崎あなた
………
まぁ、そうだろうとは思っていた。

…王馬には会えないし、というか会う手段がない。死んだ人間を生き返らせるなんてモノクマが動機に使っていたあの本くらいだろう。まぁ、本当かは分からないが。

死んでしまったのなら、文句を言ったって仕方ない。本人が帰ってくるわけでも言葉を返してくれるわけでもないのだ。でもまぁ……最後に一言くらい残してほしかったのは確かだけど
最原終一
……あれは…僕も止めたかった
…あんなの…
神崎あなた
いいよ、最原
……王馬はそういう奴でしょ
最原終一
……それでいいの?神崎さん
…一番気にしていたのに
神崎あなた
いいの、終わったことを言ったって
彼らが戻ってくるわけじゃないんだし
会いたい、もっと話したかった、はもう叶わない
神崎あなた
……悪いね、しんみりする話になって
もう帰るよ、ありがとね最原
最原終一
ううん……こんなのでよかったら、いくらでも
最原の言葉に軽く頷き、事務所を出た
夕刻
NoSide
神崎は最原の事務所を出て街中をゆっくりと歩く。

日も落ち、オレンジ色の空とそれを侵食していく青黒い空。仕事から帰る人も多くなり、歩く道は狭くなっていく。

人の声、雑踏、ざわめきの音が段々増えていき、呟きすらかき消すほどに
神崎あなた
…日付が変わる前には終わらせないと
神崎が向かう先は組織。時計や携帯を見ながら歩く。

ある角で曲がり路地裏を通って基地へ向かう
基地
神崎Side
部下
神崎幹部!?
…集合の時間はまだのはずでは…?
神崎あなた
早く始める訳でもないからゆっくりしてなよ
…私が早く着きすぎただけ
…そう、ただ早く着きすぎただけ。

……早く着いたって仕事が早く始まるわけでもない。でも、何かしていないと落ち着かない。……いつからこんなに落ち着きがなくなったのだろう
部下
…神崎幹部?
神崎あなた
…なに?
部下
いえ…その、先程お手紙が…
神崎あなた
手紙?
今時そんな古典的なメッセージの送り合いをする相手は居ないのだけど?

部下から手紙を受け取り開けると見慣れた白と黒の市松模様にあの組織のシンボルのサイコロのイラストが描かれた封筒が入っていた。……二重構造?

……その封を切ると、『今夜攫いに行くから』とだけ書かれた紙が入っていた。悪戯?あいつは居ない。でもこんな真似するような奴は身近に居ない
神崎あなた
悪いけど、ちょっと出てくる
…時間までに帰らなかったら先に行って
部下
え、ですが…!
神崎あなた
いいから
……用事ができた
嫌な予感…というのかな。とにかく今行かないと駄目な気がする、と何故か思った。こんなに好きだったっけ、あいつのこと。

学級裁判を重ねるごとに嫌いになってたのにいつの間にか惚れ込んで……
もし本人なら一発くらい許されるだろう
外に出ると室内とは違って寒い。この時期にスーツだけは流石にか…
でも、この手紙が確かなのか調べる必要がある。伝のある情報屋にDICEのことは聞けた。ただ……王馬の情報だけ出てこなかった
神崎あなた
……得意の嘘で誤魔化してる…?
…あいつのことは本当に分からない。何が嘘で本当なのか、あいつそのものが嘘だという可能性も出てきたな……
神崎あなた
……悪戯か…?
ひっどいなー
ちゃんと本人が書いたんだけどー?
神崎あなた
!?………王馬…
幻覚…?
突然後ろから声が聞こえ振り返ると見慣れた…会いたかった男が居た

…そして、何を血迷ったのか私は自分の手首をナイフで切った
王馬小吉
ちょっと!?何してるの!
……うん、夢ではないし幻覚でもなさそう。

王馬が駆け寄ってきて私の手首を止血している。目の前にいる王馬の手の温度も驚いている表情も現実のようだ。

会ったら文句の一つや二つでも言ってやろうと思ってた。なのに……
神崎あなた
……っ……なんで…
王馬小吉
?……はぁ!?何で泣いてるの
……オレまだ何もしてないよ?
神崎あなた
……アンタの所為、絶対
涙を流し始めた私に動揺している王馬。なんとか抑えられると思ったのに一滴零すと止まらなくなった。

…っ……この男の所為……全部
王馬小吉
………神崎ちゃん、怒ってる?
神崎あなた
……もちろん
お得意のからかいを引っ込め、少し不安そうに聞いてきた王馬。こいつって、人の心配できるんだ…?

少し…少しだけ得した気分になった
王馬Side
最初は手紙なんて送る気はなかった。そんな柄でもないし。

でも、突然目の前に現れたら刺されそうだと思った。神崎ちゃんならやりかねない。そう、ちょっとした好奇心、そして配慮。オレって優しいでしょ?

……手紙を持ったまま必死で走ってオレを探してる神崎ちゃんを見たらいつもはスラスラと出てくる嘘や誂いを言えなくなった。言ったら多分……嫌われる。神崎ちゃんにちゃんと好かれてるって十分わかってるし、言う必要もない。



……泣くとは思わなかった。神崎ちゃんの泣くところなんて見たことなかったし何なら泣かないとすら思ってた。あのコロシアイで人の死を見て涙一滴も見せなかったから。……なのに…
王馬小吉
………神崎ちゃん、怒ってる?
神崎あなた
……もちろん
そう言って泣きながら睨んでくる神崎ちゃん。胸が痛いと同時に、嬉しくもあった。神崎ちゃんがオレに興味無いって言ってるのに、こんなにオレを想ってくれてるから。

……オレだってちゃんと想ってるよ?ただ…愛の言葉より嘘や誂いが先に出るだけ。それがオレだからね
王馬小吉
……死んだと思った?
神崎あなた
そりゃね、あんなの死んだと思うしかないでしょ
……アンタは殺しても死なないと思ってた。なのに…
王馬小吉
……オレ、ちゃんと生きてるでしょ?
ね、ちゃんと確かめてよ
神崎あなた
………刺していいって解釈であってる?
それとも殴る?
王馬小吉
何で!?今のどう考えてもキスするか触るかでしょ!
ほんと、恋愛に関しては鈍いというか天然というか…

経験がないし仕方ないとは思う、でもその2択はないでしょ…
神崎あなた
……さっきアンタが触ってた
…体温、ちゃんと感じた。嫌なくらい
王馬小吉
えー、ホントに嫌なのー?
本当は嬉しいくせにー
神崎あなた
………うざい…
すぐそういうこと言う、だから嫌われるんだよ
そう、それでいて。そうやって冷たい視線を向けてオレだけに向けてよ。その方が神崎ちゃんらしい
王馬小吉
……………神崎ちゃん、好きだよ
神崎あなた
……また嘘?
王馬小吉
……どっちだと思う?
神崎ちゃんは何も言わなくなった。でも分かる。神崎ちゃんはオレの発言が嘘か本当か分かってる。最原ちゃんみたいになってきたな…
王馬小吉
神崎ちゃん、ほら、帰るよ
神崎ちゃんの手を取り、歩き始める。久しぶりに触れた手は少し冷たかった。こんな寒空の下でオレを探そうとしていたんだからそりゃそうか

…ね、神崎ちゃん。また、これで君と遊べるね。
愛してるよ、あなたちゃん

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