ただの友達 付き合ってない
保健室のパイプ椅子に座る俺の目の前で、
なっちゃんがベッドの縁に腰掛けながら、悪戯っぽく笑う。
熱があるなんて大嘘。
なっちゃんはただの仮病で、俺は保健委員の付き添い
誰もいない保健室は静かだけど、ぼんやりと外の声も聞こえる。
そう言って、なっちゃんは俺の顔を覗き込む
ずるい。ほんっとーにずるい。
普段はばぶだったり、授業サボるくらい気怠げな なっちゃんなのに、
俺に向ける視線だけは
… 甘すぎて溶けてしまいそうなくらい優しい。
少女漫画脳の俺の心臓は、さっきからうるさいくらいに脈打っている。
こんなんだから、ただの友達だと言うのに 自意識過剰になってしまうのだけれど。
俺の心持たへんって、、
顔が赤くなるのが触らずとも分かる。顔は背けるけど、この目がなっちゃんを離さない
なっちゃんがこちらに微笑んで、更に近づく
___ その時。
ガラ、( 扉開
突然、保健室のドアが開いた。
聞こえてきたのは先生の声 ___ ではなく、同じ学年の生徒の声だった
しかも、保健医の先生はちょうど席を外している。
サボりがバレたらなっちゃんはともかく、
付き添いの俺まで大目玉を食らう。
パニックになった俺の脳が出した答えはひとつ
俺はなっちゃんの驚く声を遮るように、
上からすっぽりと分厚い布団を被った。
狭くて、動けない薄暗い布団の中
勢い余って、
俺はなっちゃんを押し倒すような形で、彼の胸元にすっぽりと収まってしまっている。
心臓の音が、うるさい。
どくりどくりと耳の内側まで響き 顔が火照っていく
時が止まったようにも、何分も立ったようにも思えた
やっと声が聞こえなくなって、2人とも静かに布団から顔を出す
2人の間、なんとも言えない雰囲気が流れた
顔があつくて、なっちゃんの方を見れない
こんな照れてるの引かれてないかな、
俺となっちゃんは、ただの友達なんだから。
自意識過剰になんて、なっちゃだめなんだから。
………
会話がない。
沈黙の音が、煩い。
いつもなら、いくらでもノリ良く喋れるはずなのに
喉の奥が乾いて、言葉がうまく出てこない。
なっちゃんはベッドの縁に腰をかけて、気まずそうに目を背けた。
耳の裏が、ほんのり赤い。
あんな近くで、なっちゃんの顔、見たことなかった
からかう時とは打って変わって余裕がない、あの目
そこまで考えて、自分の顔が更に真っ赤になっていくのが分かる
キーンコーンカーンコーン…
逃げるように保健室から飛び出し、扉を閉めた。
なっちゃんと物理的に距離が取れて、安堵か羞恥かわからない感情が渦巻く
ただ、その中にさみしさがあったのも事実。
運動したわけでもないのに息がちょっと上がってて、言葉にならないうめき声が出る
勘違いなんてするもんじゃないのに。自意識過剰だってわかってるはずなのに。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。