そう言われたら殴った
そう笑われたら蹴飛ばした
そう言われたら質問をした
昔から1人でも平気だった
というより
他人への関心が過度に低かった
相手がどうなってもどうでもいい
それは僕ではないのだから
僕が怪我をしたら僕に支障が出る
でも僕以外の誰かに何かあろうと
別に僕に支障はない
小学生の頃、休み時間というものがあった
ある日、その当時の友人に遊びに誘われた
特に予定もなかったので一緒にサッカーボールを持って校庭へ行った
グラウンドには6年生が居た
そして無駄に馬鹿でかい声で話していた
友人はそれを見ると足を止めた
僕にはそれが何故か分からなかった
僕の通っていた小学校には不良が多かった
6年生となると力も強く体も大きい
当時中学年の僕らが当然敵わない相手であった
でも僕はあまり気にしていなかった
年の違いは仕方ないとは思っていたが
だとしたらなぜあんなに6年生は馬鹿みたいなのだ
常々そう思っていた
歳が上なら当然精神年齢も上がるはず
なのに彼らは全くもってガキのままであった。
僕はお願いされたらそれをする
どいてと言われたら「ごめん」と謝罪してどく
それぐらい出来るのが当たり前
まだ僕らの学年は幼くみんな仲が良かったから特に
だから彼らも当然年上ならできるだろう
それが僕の考えだった。
友人に止められても無視し
僕は6年生の所へ駆け寄った
6年生は目に見えて怪訝そうな顔をした
僕はそんなの気にしなかった
そう聞くと6年生は少しぽかんとした顔で僕を見た
そして突然腹を抱えて大笑いした
当たり前のようにそう聞かれたから当たり前のように疑問を返した
そう言った瞬間6年生は青筋が立った
眉間に皺を寄せ、先程とは打って変わって僕の事をとても怒ったように睨んでいた
そう言われた
なぜこんなに怒っているのか僕には理解できなかった
別に僕はそう思ったからそう言っただけ
ただの哀れみの1種だった
そしたら1発ぶん殴られた
右頬を殴られたので口の中が切れた
血の味が少し不快だった
声を荒らげてそう叫んできた
うるさかった。
これもただの疑問
別に挑発しようとしたわけでも煽ろうとしたわけでもない
でもそれが彼らの地雷だったらしい
6年生は拳を固く握り直してから
僕に殴りかかってきた
リンチが終わったのは多分あれから3分ほど経ってから
僕の友人が先生を呼んできてくれていたことで6年生が逃げたから
友人は泣きながら僕に大丈夫かと言ってきた
でも僕は痛さより
年齢と頭の良さは比例しないんだな
と考えていた。
怪我の中には少し骨折も混じっていた
それでもあまり気にしなかった。
中学生の時は友達が沢山できた
そして僕はその頃から少し人の扱いが上手くなっていた
人の弱みを軽く握っておいて
人を動かしたい時にその弱みを強く握る。
つまり提示するということ。
例えを出すとスクイーズのようなもの
軽くふわりと握っておいて
使いたくなったら潰して遊ぶ
所詮それだけであった。
僕は君らの味方だということを表して
色々教えて貰って
ほんのりそれを使うだけ
だからとても楽だった
それと人間は事実を言われると怒る
だから事実と真逆のことを言って好感度を上げた
自分に都合のいいことは信じたくなるのが馬鹿の特徴
そして自分も馬鹿のフリをする
そしたら周りが仕方ないなと言って色々してくれる
たいそう楽であった。
僕はよく人から相談事を持ちかけられる人間だった
恋バナとか特に。
ここで僕はいいことを思いついた
中学生はたいそう馬鹿な生き物だ
自分は手の上で踊らされていないと思っている。
妙にプライドが高いのだ
だから操りやすかった。
値段のことだってこのように冗談めかして言うと
などと金まで払う
馬鹿だなあ
仕入れは無料なのに
こんなのに金を使うやつの気が知れない
でもそのおかげで俺に利益が入るのだから
まあ得なのだが
茶化せばだいたい出来る
怒った時なども冗談っぽく言えば仲は険悪にならない
だが大多数は本心を隠すことすら出来ない愚かな者なのだ
だから友人たちの仲が険悪になっても
僕は対して弊害を喰らわなかった。
逆に馬鹿みたいで面白いなと思っていた
身近に娯楽があって楽しかった
だがそんな何事にも妥協的な僕の姿勢が気に入らない者も数名居た
でも僕は自分で言うのもなんだが中々に人望があるので
中学時代は得が多かった
特に問題もなく金を稼いで卒業した。
高校は同じ中学の奴らが行く高校に適当に受験した
対して将来の夢もなかった。
問題は高校であった
中学からの同級生は大半が僕のことを盲信していた
中学でのことがあってだろう。
だからこそ同じ中学の奴が行く高校にしたのだが
やはり別の中学からも多く生徒は入ってくる
僕はそういう奴らに不信感を持たれた。
同じ中学の奴らに過度に信頼されすぎているのと
僕の他人を少し下に見ている性格がバレたらしい
だがそれは少し間違っている
僕は少し下に見ているんじゃない
ほぼ人間として感じていないと言ってもいい。
僕なんかに騙されているようなやつが将来やっていけるとは思えない。
まるでバカバカしいのである。
なのでその疑ってきた奴らは僕からしてやっとで人間レベル
僕は高校に入って初めて”人間”に出会えたのであった。
そしてそんな奴らは
僕のことをたいそう嫌った。
高校から同じになった奴に言われた
人気のない屋上へ向かう階段に呼び出されて
相手は人気のあるいい奴だった
責任感もある
まさにこんな僕に説教をしてきそうな
でも感が良すぎて彼のような”人間”は少し嫌いだった。
馬鹿みたいな”ペット”の方が楽ではあった。
僕は思っていることを言った
同じ”人間”なら僕の言いたいことを理解してくれると思った
そう高らかに言った瞬間
強い力で胸の部分を押された
驚いて彼を見ると
酷く怒った顔で僕のことを見下していた
彼の荒ぶった表情を初めて見た
人間でも馬鹿みたいに荒ぶることはあるのだな。と
そしてそれと同時に気づいたことがある
僕は人間じゃない
ペットでもない
クズだった
目が覚めたのは病院
僕を突き飛ばした彼は退学だったらしい
何故そこまでかと思ったが
理由はすぐに分かった。
脊髄損傷による下半身不随
僕は自分の足で歩けなくなってしまった。
だが僕はあまり気にしなかった。
親は泣いていた
親の前でも僕はニコニコと社交的に演じていたからとても悲しまれた
でも僕からすると親だって”ペット”の1種だった
そう言って笑った。
同級生も何人もお見舞いに来た
中には泣いて悲しんでくる奴もいた。
なぜ他人に対してこんなに感情をもてるのかは分からなかったが
とりあえず感謝しておいた
僕を突き飛ばした彼がどこへ行ったのか少し気になった。
それから高校三年生になり進路を考える時期となった。
公務員がいいとは考えていた
そこで僕は思った
”人間”でもない、”ペット”でもない
犯罪を犯すようなクズなら僕と対等かもしれない
僕と対等な者と話がしてみたかった
正義感などこれっぽっちもない
お遊びと興味本位であった。
看守学校では新里君という面白い子と出会った
彼は確実に”ペット”であろう
でも彼の面白いところは
自身が”ペット”だということを完璧に自覚していること
自身の立場を明確に自覚しているのが好きであった。
だから彼は面白かった。
だから僕から仲良くなった。
でも最近
妙に面倒くさい”人間”が出てきた
新里君の上司
”人間”で遊ぶのは初めてだ
せいぜい楽しませて欲しいものである。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。