風が私の髪をたなびかせる
何故か開いている屋上でお弁当を食べる
自然の美しさを感じながら卵焼きを口に運ぶ
卵焼きが口に到着したと同時に、私の後ろから声が聞こえた
1人で、というワードが気に入らなかったので
少し強い口調で言った
それからも2人で笑いながら会話をした
お弁当を食べる手は止まっていて
全く進んでいなかった
少しの間が空き、佐野くんの口から出てきた言葉は
なんの宛にもならない、美しい言葉だった
自分で好きにしていいよ
なんて言われたって、大概何をすればいいか分からないものだ
もし、気持ちを伝えなかったら?
伝えず後悔することになったらどうする?
逆にこの気持ちを伝えたとして
相手に対してそう思っていたのは私だけだと知ったら?
もう今までの関係でいられなくなったらどうする?
そんなことを考えると怖くて、怖くて
前に進めずにいる
彼が心配そうにこちらを見たのは
きっと私の目に涙が浮かんでいたからだろう
でも私はそれに気が付かなかった
佐野くんはなんと言えば正解なのか分からず
困っていた
佐野くんはまた、宛にならない言葉を言う
でもその言葉は、私にとって救いでもあった
佐野くんの言葉は私の心に深く刺さった
槍が刺さったようなものではなく
まるで、何かで包んでくれているような
そんな感覚
私達はそっと小指を絡め、約束をした
私の愛する神様と約束をした時のように













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。