バッと飛び上がるように起きたそこは、気絶した硬い地面じゃなく、俺のベットの上だった。
なんでここに居る?俺は庭で気絶したはずじゃ……
急に横から声がしたと思えばいたのは刀也さんだった
そうだ、今日は刀也さん達との約束の日。
てことは結構な時間地面で寝っ転がっていたのか
それより、ととやさんは続ける。
その時の刀也さんはどこか上の空…というか、何かを含んでいる顔で
何時も見るあの優しい笑顔じゃなかった。
“あの人”というのは恐らくあの副会長のことだろう。
その時に手を差し伸べる刀也さんの声が少し暗くて、そうなっている刀也さんを初めて見た俺は、少し驚いて戸惑ったことを覚えてる。
刀也さんに案内されて行き着いたのは地下の階段を降りたところにある扉で
入った途端目眩と吐き気がしてよろけてしまった。
おかげでまた寝そうだ。
そう副会長がにこやかに笑う。
笑っている顔だけを見ればただの挨拶のように見えるかもしれない。
だが、彼女の周りには赤い水溜まりが各所にあって服は血だらけ。
血で染められたのであろう手には血糊がべっとり着いたナイフ。
そして極めつけは
その部屋のど真ん中に、椅子に縛り付けられている義母さん。
義母さんには副会長に付けられたであろう傷が、血を流しながら椅子の下に水溜まりを作っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!