さとりside
横で騒いでも、先程のように不穏な会話を堂々としていても、誰一人そのことに気づかない。無意識に干渉できるこいし…私の大切な妹は、今日も笑顔を絶やさず散歩をしていた。私も、姉としてそれに同行する。
始祖様…鬼の始祖にして首魁、鬼舞辻無惨のことだ。
たまたまではあるが、鬼にする人間を探していた始祖様と合流した私たちは、他愛もない雑談を少しの間交わしたのちに、それぞれの目的のために別れて行動する。
私たちが再度行動を始める前の最後の記憶…それは、戦乱の世のもの。始祖様の記憶などから、十二鬼月の創設、江戸、明治、大正と、移り変わる世の中、今代の柱の厄介さは理解した。
私たちは日輪の耳飾りをつけた青年を探しに、竈門家のある山の下町に降り立った。
炭治郎side
町からの帰り、俺は嫌な何かを感じ取っていた。
とりあえずその気配は気にせずに、俺は家へ戻った。
……そこに待っていたのは、残酷な現実だった。
家族は、禰󠄀豆子を残して惨殺されていた。そして禰󠄀豆子も、鬼となっていた。この日から、俺は鬼殺への道を歩み始める。人の美しい日常を理不尽に奪う鬼共を、俺は許さない。
さとりside
こいしに竈門禰󠄀豆子への干渉を任せて、私は竈門炭治郎の記憶を読む。
耳飾りは、代々伝わってる代物、ね……ヒノカミ神楽、か。扱うのは剣ではないけど…日の呼吸に酷似してる。でも、始祖様と黒死牟が日の呼吸を失伝させたはず。これは……危険かもしれない。
…ということは、禰󠄀豆子はかなり特殊な鬼になりそうね。私たちが思念を送れないということは、支配から逃れた…いや支配を外したのでしょう。ということは始祖様の悲願……日光の克服にも使えるかもしれない…。
いや…日の呼吸を形だけでも使用し、禰󠄀豆子の兄である炭治郎が鬼になれば…?
私たちは炭治郎のもとを離れ、意識を失っている間の出来事の情報収集を再開した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!