第11話

(1)「あらざらむ」
63
2018/02/12 10:08 更新
華&裕樹 (1) 華side


「もって、……あと、一週間でしょう、」

病気だとわかっていた
無理だとわかってた

元々賞味期限間近だった私の命に、
消費期限を突きつけられただけなのだ

それでも

あったはずの覚悟は

一瞬で透明となった


「____酷いわ…酷い……あんまりよ、」

泣きじゃくっているお母さんを見たのは初めてだった

「……華、お前の今の願いはなんだい?出来る限りのことをしよう」

お父さん、
そんな悲しそうな笑みを見せないで


「………私を、裕樹、くんに…、会わせて、」

声なんてほとんど出ない今の状況で
他人に会うなんて迷惑な話だ

それでも、最後に会いたい人だった


「……こんにちは」

どこから連絡して本人まで繋げたのかは分からないけれど、その会いたかった人は次の日現れた

数年ぶりに会った幼馴染は背が伸びて声が少し低くなって髪型も大人っぽくなった

顔立ちも服のセンスもなんとなく違ったけど、雰囲気だけは変わらず優しそうだった


「…………華、」
「…ゆ……」

言いたいことはたくさんあるのに、
うまく息が出来ない

苦しい、

ああ私本当にもうすぐ死ぬのね


「無理して喋んなよ、なんか、うん……ごめん、幼馴染がこんなになってるのに気づかないで、会いたいって言ってくれてありがとう
俺も、会いたかったよ」

記憶を繋いだり、言葉を紡いだり、他人の話を聞くのも、難しい

そんなことに気づくのが私は遅すぎたんだな

もっと早く気づいて
裕樹くんに会っていれば
伝えることが出来たのかな

今はもう傍にいてくれれば
私の最後の記憶にいてくれれば……

「華、お前は知らないかもしれないけど、俺実はお前のこと…」

ゆっくりもったりとだけど

何を言おうとしてるのか察した私は
話の序盤で、裕樹くんの口を塞ごうとした

力を振り絞りあげた私の手を見て、
裕樹くんは言葉を止めた

「……いわ、ないで…わた…しも、…い、わ…ないか…ら、」

お互いがお互いをどう思ってるいたのか、
その一瞬で理解できた


言いたいけどこれ以上大切な存在にして、
失いたくない

幸せをもらって、
もらいっぱなしになって旅立ちたくはない

「華の最後の願いはなに?出来るだけ叶える」

お父さんと同じようなことをいうのね

案外お父さんみたいな人を好きになるっていう娘の好きな人あるあるは当たっているのかもしれないわ

でも、私の願いはもう叶ったの、



そうね、あとは…



「…わたし、を、……わす、…れ、て、」

涙が私の頬を伝う

それにつられるように裕樹くんの瞳からも雫が零れ落ちる

「なん、で………」


私にはもうあなたの問に答える気力は残っていなかった


最後に会いたいって言って

好きだと自覚して

言わせないで言わないで

それでいて忘れてだなんて、

残酷なことをして、
我儘なことを言って、



ごめんね___



あなたの心の中で取り残されるくらいなら、

あなたの幸せを心から願いたいの

…他の人とでいい、誰かと幸せに



____私の閉じた瞼の裏側には、
笑って手を振る裕樹くんが立っていた



そうね、ばいばい。

あなたが年老いたおじいさんになってからこっちに来るのを待っているわ

プリ小説オーディオドラマ