ガチャ
木製の扉を開けると、変わらない部屋があった。
ホコリなどもない。おばさんが掃除したんだろう。
吸い込まれるように、部屋に入ると、おばさんは微笑んで
おばさんが扉を閉めると、そのままベッドに座る。
ベッドから見える机、本棚、椅子、ローテーブル、クローゼット。
全て思い出だ。
机...引き出しん中になにか入ってへんかな。
立って机に近づき、引き出しを開ける。
ある引き出しには、絵。
ある引き出しには文房具。
ある引き出しには、日記が入っていた。
気になって、手を伸ばし、そのまま椅子に座る。
ぺらり、とページを捲っていく。
内容は他愛のないこと。
何をしたとか、勉強疲れたとか、テストやばかったとか、
×月×日
病院に行ったら、持病が悪化したって言われた。
明日、シャオロンと一緒に帰る時に話そうかな
正直、怖いし、不安。
まだ、気持ちを伝えられていないから、いつか、言わなきゃ。
×月×日
帰り道、シャオロンに話した。
凄く、驚いてたし、心配してくれた。
ほんと、優しいんだよね。 そういうとこが好き。 昔から。
いつになったら、言えるのかな。
×月×日
入院が決まった。
日に日に弱くなっていく自分に嫌気がさす。
シャオロンは毎日来てくれる。
その度に、好きになって、辛くなる。
どうすればいいんだろう、私は。
×月×日
久しぶりに、シャオロンが連れ出してくれたよ。
車椅子を押してくれた。
でも、もう終わりが近い気がするの。
だから今日でこの日記も終わりにしようと思う。
部屋に戻しておくね。
今読んでるのは誰だろう?
家族?友達?シャオロン?はたまた元気な私?
私の、心残り、ここに書かせてください。
シャオロンが、ほんとに好きだった。
多分、言えない。私以外の人と、これから幸せになって欲しい。
言いたいけど、言えない。言わない。
だから、ごめんね。
優しくて、太陽みたいに照らしてくれて、いたずらっ子で、面白くて、たまにドジで、天然なシャオロンが大好き。
出会えてよかった。
ありがとう。
最後に、約束してね。
元気に過ごしてね、私の分まで沢山生きて、生きて、幸せになって、そしたらまた遊ぼうね。
ぽたり、と涙がノートを濡らす。
呆然と眺めていたが、ふと我に返り、ノートを閉じる。
ノートを片手に、ネックレスをつけて、おばさんに挨拶して、家を出た。
次に向かうのはあの公園。
あの夏が、あそこに残っている。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。