第2話

  1 ⌇ episode
117
2026/02/25 14:04 更新



   黄瀬 巫都は 、きらきらしている 。


   転入してきてまだ一週間も
   経っていないのに 、
   彼の周りには常に人がいた 。


#
 お昼一緒に食べない ? 

#
 みことくん 、部活見学来る ? 



   全部 、女子 。


   本人はというと 、
   困ったように笑いながら全部に返事をする 。


# 黄瀬
 みんなで食べよ 

# 黄瀬
 ん ~ 、帰宅部がええかなぁ 



   怒らないし 、拒まないし 、避けない 。


   だからみんな勘違いする

   優しい = 脈あり 、だと 。


   私は少し離れた席でそれを眺めていた 。

   別に冷めているわけじゃない
   ただ 、眩しいなあと思うだけ 。


   ああいう人は 、
   たぶん生まれた時から中心だ 。


   私はノートにペンを走らせる 。

   関係ない 。


   そう思っていた 、その日の放課後 。


   廊下の角で 、
   泣いている女の子とすれ違った 。


   見覚えがある 。

   昨日まで 黄瀬くん の隣にいた子だ 。


#
 … なんで 、 



   小さく漏れた声 。

   思わず 足が止まる

   その子の友達が怒った声で言う 。


#
 まだ2週間も経ってなくない ? 

#
 しかもさ 、
 “ なんか違う気がした ” って … 



   胸が少しだけ重くなる 。


   ああ 、そういうタイプなんだ 。

   悪い人には見えない 。

   むしろすごく優しそう 。


   でもたぶん ───


   深く考えていない 。


   翌日 、

   教室はもう次の恋の予感でざわついていた 。


#
 昨日 、別れたらしいよ 
 
#
 え 、早くない 

#
 でも みことくん って優しいよね 。 
 ちゃんと向き合ってくれるし



   向き合う 、か 。

   2週間で人の気持ちは測れない 。


   そう思ったけれど 、私は何も言わない 。

   関係ないから 。


   昼休み 、私は図書室に逃げた 。
   静かな場所が好きだ 。


   窓際の席に座り 、問題集を開く 。


   数分後 。

   向かいの椅子が引かれる音 。


   顔を上げる 。 

   予想通りの人 。


# 黄瀬
 また会ったね 



   にこっと笑う 。


   距離が近い 。

   近いのに 、嫌な感じがしないのがずるい 。


# 黄瀬
 図書室 好きなん ? 

あなた
 静かなので 

# 黄瀬
 なら 俺も静かにせんとな 



   小声で言うから 、思わず笑ってしまう 。


あなた
 昨日 、彼女さんと別れたんですか 



   言ってから 、少しだけ後悔する 。


   踏み込みすぎたかな 、と 。

   でも彼はきょとんとした顔で 、


# 黄瀬
 せやな 。なんか違う気して … 

あなた
 泣いてましたよ 

# 黄瀬
 … 泣いてた ? 



   初めて 、少しだけ表情が止まる 。


# 黄瀬
 俺 、ちゃんと話したんやけど ? 
 
あなた
 それは分かります 

# 黄瀬
  えぇ 、ならええやん 



   本気で分からない 、という顔 。

   私は首を傾げる 。


あなた
 好きって言われて 嬉しかったから 
 付き合ったんですよね ?

# 黄瀬
 うん 

あなた
 でも違うって思ったから 別れた 

# 黄瀬
 うん 



   まっすぐ 。

   嘘はない 。


あなた
 それって相手はしんどいですよ 



   彼は黙る 。

   数秒後 。


# 黄瀬
 あなたの下の名前ちゃん は 俺のこと 、 
 好きになれん タイプやな



   話を逸らしているのか 、
   それとも 普通に話たかったのか 、
   急に話が飛んだ 。


あなた
 どうですかね 

# 黄瀬
 目がキラキラせんもん 

あなた
 観察してるんですか 

# 黄瀬
 気付いたら目で追ってた 



   即答 。

   目で追う なんて普通なら勘違いされる
   ような言葉を平然と言う 。


# 黄瀬
 俺のこと嫌い ? 

あなた
 いえ 。普通です 

# 黄瀬
 普通って一番むずいやつ 



   机に頬杖をついて 、じっと見てくる 。


   その視線は 、今までの女子たちに
   向けていたものと少し違う気がした 。


# 黄瀬
 なぁ あなたの下の名前ちゃん 

あなた
 はい 

# 黄瀬
 俺と付き合ってくれへん ? 



   あまりにも軽い 。

   思わず笑ってしまう 。


あなた
 2週間で終わりですよ 

# 黄瀬
 今回は更新するかもしれへんやん 

あなた
 仕様ですか 

# 黄瀬
 俺もまだわからん 



   ふわっと笑う 。


   その無邪気さが 、たぶん一番危ない 。


   私はペンを置く 。


あなた
 私は 好きにならないと 、 
 付き合いません 。

# 黄瀬
 ほな 、好きになって 

あなた
 簡単に言わないでください 

# 黄瀬
 簡単ちゃうよ 



   一瞬だけ 、目が真面目になる 。


# 黄瀬
 初めてなん 。追いかけるん 



   心臓が 、小さく跳ねた 。

   でも 、まだ 。

   まだ私は 恋を知らない 。


   そして彼は 、
   本気を知らない 。


   きっとこれは 、面倒な始まり 。


   それでも ───


   少しだけ 。

   ほんの少しだけ 。


   2週間で終わらない何かを 、
   見てみたいと思ってしまった 。







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