黄瀬 巫都は 、きらきらしている 。
転入してきてまだ一週間も
経っていないのに 、
彼の周りには常に人がいた 。
全部 、女子 。
本人はというと 、
困ったように笑いながら全部に返事をする 。
怒らないし 、拒まないし 、避けない 。
だからみんな勘違いする
優しい = 脈あり 、だと 。
私は少し離れた席でそれを眺めていた 。
別に冷めているわけじゃない
ただ 、眩しいなあと思うだけ 。
ああいう人は 、
たぶん生まれた時から中心だ 。
私はノートにペンを走らせる 。
関係ない 。
そう思っていた 、その日の放課後 。
廊下の角で 、
泣いている女の子とすれ違った 。
見覚えがある 。
昨日まで 黄瀬くん の隣にいた子だ 。
小さく漏れた声 。
思わず 足が止まる
その子の友達が怒った声で言う 。
胸が少しだけ重くなる 。
ああ 、そういうタイプなんだ 。
悪い人には見えない 。
むしろすごく優しそう 。
でもたぶん ───
深く考えていない 。
翌日 、
教室はもう次の恋の予感でざわついていた 。
向き合う 、か 。
2週間で人の気持ちは測れない 。
そう思ったけれど 、私は何も言わない 。
関係ないから 。
昼休み 、私は図書室に逃げた 。
静かな場所が好きだ 。
窓際の席に座り 、問題集を開く 。
数分後 。
向かいの椅子が引かれる音 。
顔を上げる 。
予想通りの人 。
にこっと笑う 。
距離が近い 。
近いのに 、嫌な感じがしないのがずるい 。
小声で言うから 、思わず笑ってしまう 。
言ってから 、少しだけ後悔する 。
踏み込みすぎたかな 、と 。
でも彼はきょとんとした顔で 、
初めて 、少しだけ表情が止まる 。
本気で分からない 、という顔 。
私は首を傾げる 。
まっすぐ 。
嘘はない 。
彼は黙る 。
数秒後 。
話を逸らしているのか 、
それとも 普通に話たかったのか 、
急に話が飛んだ 。
即答 。
目で追う なんて普通なら勘違いされる
ような言葉を平然と言う 。
机に頬杖をついて 、じっと見てくる 。
その視線は 、今までの女子たちに
向けていたものと少し違う気がした 。
あまりにも軽い 。
思わず笑ってしまう 。
ふわっと笑う 。
その無邪気さが 、たぶん一番危ない 。
私はペンを置く 。
一瞬だけ 、目が真面目になる 。
心臓が 、小さく跳ねた 。
でも 、まだ 。
まだ私は 恋を知らない 。
そして彼は 、
本気を知らない 。
きっとこれは 、面倒な始まり 。
それでも ───
少しだけ 。
ほんの少しだけ 。
2週間で終わらない何かを 、
見てみたいと思ってしまった 。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。