人を好きになるのって 、
たぶん才能だと思う 。
目が合っただけで胸が鳴ったり 、
声を聞いただけで嬉しくなったり 、
一言で一日が変わったり 。
友達はそれを「 普通 」って言うけど
私にはまだ 、
その感覚がよく分からなかった 。
恋より先に 、やることがあったから 。
奨学生で入ったこの学校は 、
努力しないとすぐ置いていかれる 。
だから私は 、ちゃんとやる 。
それだけ 。
朝の HR前 、クラスがザワつく 。
楽しそうだなぁ 、と思いながら私は笑う 。
本心だった 。
それ以上でも以下でもない 。
芸能人を見るのと同じ距離感 。
遠い世界の人 。
関係はたぶん 、ない 。
──── そのはずだった 。
扉が開く 。
先生と後ろから見慣れない男子生徒 。
淡い黄金色の髪色に 、
童話の王子様のような人 。
関西弁 。
教室の空気がふわっと明るくなる 。
笑顔が先に広がる人っているんだ 、
と少しだけ驚いた 。
整った顔なのに きらきらしすぎてなくて 、
どこか子供っぽい 。
たしかに目を引く人だな 、と思う 。
でもそれだけだった 。
私は普通に拍手して 、
普通にノートを開き直した 。
それで終わりのはずだったのに 。
放課後 、図書室 。
問題集に丸をつけていると 、
机の向かい側に人が座る 。
顔を上げると 、朝の転入生 。
にこっ と人懐っこく笑う 。
それだけ言って 、私は視線を戻した 。
数秒の沈黙 。
声が小さい 、図書館仕様 。
自信があるような 私を見て不思議そうな
目で見てくる 。
くすっと笑う声 。
距離が近いのに 、押しつけがましくない 。
でも 、やたら話しかけてくる 。
不思議な人 。
まっすぐ言う 。
照れも計算もない 。
たぶんこの人は 、
こうやって自然に好かれてきたんだろうな
と思った 。
まだこの時は ────
この人が
何度も恋を始めて 、
何度も終わらせて 、
その全部を “ 悪気なし ” で
やってきた人だなんて 、
知らなかった 。
そして 私にだけ 、
はじめて本気になることも 。
──── … 。
──── … 。
──── … 。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。