第2話

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2026/03/23 13:15 更新
ジュンミン視点









初めて会ったときは、天使かと思った。



宿舎生活、ダンス、歌、ラップ、競走



なにもかも初めてで、うまくいっている気がしなくて。

俺だけが取り残されてるみたいで、いつも隠れて泣いてた。
そんなときに、彼女は現れたのだった。
「大丈夫ですか?」

「ここのバス停、よく遅れるから来るの遅いんですよ」

「あの、もしよかったらこれ貸すので、
歩いたほうがいいかもしれないです」





彼女の短い髪が強い風に吹かれてなびいた。




何も知らない赤の他人に優しくされたのは始めてだったし、

当時の俺には、その優しさがすごくありがたかった。

そうして俺は、目の前の天使に恋をした。







数年後、長かった練習生生活を終えて、

事務所の全スタッフさんの前で始めて挨拶をした時だった。




「!」

「あの人…」

「もしかして、あのときの…?」




髪の伸びた彼女が、

スタッフさんたちの中にいた。







もう、これは運命だと思った。







けれど、現実は想像よりうまくいかないもので、

接点のない彼女に話しかける勇気も度胸もなく、

気づけばデビューしてから3年目を迎えていた。






「今度のコンテンツから、新しくスタッフさんが
数名加わるからな、まずは挨拶しよう」


ある日の会議で、マネージャーさんが言った。



「はい!」 



「まずはチーフの〇〇さん、」

「それと、このコンテンツの内容を主にまとめてくれる、」

「あなたさんだ」



「!!!」



あのときと変わらない落ち着いた表情で、彼女は言った。


「こんにちは!これからよろしくおねがいしますね」







数日後





せっかく接点ができたというのに、俺はやっぱり話しかけられずにいた。

それどころか、変に意識してしまう。

目がずっと彼女を追ってしまうし、
頭がおかしくなりそうだ。





雑念を払おうと練習室に向かっていると、

彼女の声がした。



「え、聞いてないけど、なんで??」

「最近流行りじゃないですか、退勤を早くして、生活を充実させてい くんですよ!」



少し間を空けて彼女は言った。



「そっか一、、まあわたしには関係ないかなー、彼氏もいないし、友達 も仕事で忙しくて遊べないし」

「えー、せっかくですしどっか飲みに行きましょうよ一」







彼氏、いないのか。 


てことは今がチャンスなんじゃないか、

この機会を逃したら、もう俺は
一生話しかけられないだろう。




今日こそ、話しかける。



決心しながら、俺は練習室へ着いたのだった。





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