その後、不破湊の提案でクレーンゲームの
コツを教えてもらえることに。
正直、あまり乗り気ではない。
でも、ノリが悪いヤツだとは
絶対に思われたくない。
そんな心の狭間で迷っても、
結局私は押し負けてしまうのだ。
そういう人間だ、私は。
財布に手を突っ込んでまさぐる。
百円玉はあと何枚あったっけ…
どこまで気遣いができるんだ、この男。
ただただクレーンゲームを教えてもらう
だけなのに、耳元でその甘い声を
囁かれると、ドギマギしてしまう。
掌がそっと重なる。
どこまでも優しくて、大きい掌だ。
指をとんと押されて、そこを操作する。
それを繰り返していくと、アームが
ぬいぐるみの紐に引っ掛かる。
もしかしたら人生初かもしれない。
クレーンゲームで、こうやって、
しかも人前で、景品を取ることが出来たのは。
ほぼほぼ不破湊の力で取れた気もするが、
そんなことよりも取れた、という事実の
方がよっぽど私にはデカいことだった。
もう興奮って言っても良い。
子供みたいに取った景品を大事に手に乗せる。
もともと別に特別欲しかったわけ
ではないのに、なんだか無表情を
貫いているくまのぬいぐるみが急に
愛らしく、特別に思えてきた。
そんな私にずっと視線を向けている不破を
ちらりと盗み見る。
とんでもなく甘ったるくて、
優しく、暖かい視線を向けられていて、
思わず目を逸らした。
目は時に、口よりもものを語る。
今の不破湊の瞳は…あれは、一体、
だから、気にしてない?
こんなにも、心臓の音が身体に
響いているのに、そんな訳、ないじゃん。
本当、調子が狂う。
手編みの瞳をよく見て?
とっても可愛いでしょ?(分からん)











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。