岩本side
出会いは偶然も偶然だった。
ご贔屓にしていただいてる会社の重役と飲みに行った際、2軒目としてホストを勧められたことがきっかけ。
上手い言い訳を咄嗟に思いつくことができず、流されるままに『Platina Snow』と書かれた看板を掲げる店の中に入った。
店内は俺の想像していたクラブっぽい雰囲気ではなく、落ち着いたバーの方が近い。
ホストもチャラチャラした人よりかは気品のある人たちの方が多いような気もする。
と、俺よりも一回り小柄な、ブラックシャツを着た青年がこちらに歩いてきた。
どうやら社長を知っている人らしい、よほどの顔馴染みなのか、タメ口だ。
…さっぱりわからない、何言ってるんだ。幹?枝?俺は木なのか…?
仲良くはなってない、と訂正したい気分だけど、まあ仕方ないな…と思っていると、社長と話していたそのホストらしい人がこちらを向いた。
切れ長の目と白い肌、艶やかな黒髪に厚く色っぽい赤みを帯びた唇。男なのに、どこか雌猫のような雰囲気がある。
タツ、と名乗ったその美青年は、ホスト初めて?なんて聞きながら俺の隣に座った。
ふわりとベルガモットの香りが鼻腔をくすぐる。
タツさんはメニュー票みたいなものを取り出し、この店の初回?のルールを1から丁寧に教えてくれた。
俺の質問にもしっかり目を見て答えてくれる。口調こそ軽薄そうにきこえるけど、中身はしっかりしているのかもしれない。
そう言ったタツさんの指先が、俺の指に触れた。
この人と、もっと話したい。
気づいた時には、そう声に出ていた。
まんまと彼の思惑通りな展開になってしまったのは悔しいが、興味を持ったものは仕方ない。
お酒のこともあってか、話は弾んだ。
相手はホストなだけあって聞き上手で、こちらが引け目を感じないように時々自分の話もしてくれる。
もっと、もっと彼のことを知りたい、
そう思っていた頃にはすでに、恋に落ちていたのかもしれない。
…彼が、タツさんが欲しい。
そう思ったら、もう止められなかった。
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結局あの一夜でタツさんを買い取ることはできなかったけど、店に通っていくたびにタツさんの人となりに触れて、その度に惹かれていった。
最初は大人っぽい態度で接していたタツさんも、次第におしゃべりな一面があると知って、今は彼のいろんな話を聞かせてもらっている。
そういうと、タツさんの顔が少し翳った。
シャンパンを流し込むタツさんを見て、この人も何かが足りないのかな、なんてぼんやりと思った。
この人はいつも、「照になら」とか「照だけには」みたいなことを連発する。
口癖なのか、営業なのか、はたまた素なのかわからないけど、ちょっとは俺を特別扱いしてくれているのかな、なんて。
某トークアプリの連絡先を交換して、シャンパン一本を〆に飲んだ後、その日は解散となった。
店の前まで毎回タツさんは送りにきてくれる。
お土産何にしようか…そう思いながら帰ろうとすると、
突然タツさんが後ろから抱きついてきた。
背中から聞こえるタツさんの声。
…正直、すごく、ドキドキした。
ーーーあとがきーーー
どうも!とぱです!!
岩本さんの出張先にツッコみたいかた、たくさんいると思います…が!
私がなんにも思いつかなかったせいです!すみません!!!笑
岩本さんには超有能な通訳もついていく設定で…((
ところで、今日の8時半にお絵描き専用の投稿ページ?みたいなものを作ろうと思ってます!
ゆるーく更新していく予定です💞よければ見てください!!
💖、💬、🌟お待ちしてます!では!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!