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第2話

♯2 「大丈夫」
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2026/01/23 11:09 更新


研究室の前は、相変わらず薬品と紙の匂いが混じっていた


ハンジ
 あ、あなたの下の名前!来てくれたんだ! 
あなた
 はい。呼ばれた気がして 
ハンジ
 気じゃなくて呼んだよ! 
あなた
 ですよね 


二人で笑う


ハンジ
 ねえあなたの下の名前、最近ちゃんと寝てる? 
あなた
 え?はい、まあ…それなりに 
ハンジ
 その”まあ”が怪しいんだよねえ 
あなた
 ハンジさんに言われたくないです 
ハンジ
 それは否定できないなぁー 笑 


また笑いが起きる


でも、すぐに沈黙が落ちた




ハンジは机に肘をついたまま、少しだけ視線を落としていた


あなた
 …ハンジさん? 
ハンジ
 んー? 
あなた
 無理、してませんか 
ハンジ
 …… 


一瞬だけ空気がとまる


ハンジ
 あなたの下の名前は優しいね 
あなた
 そ、そんなこと…
ハンジ
 でも大丈夫!ほら、ちょー元気! 


そう言って笑うハンジの顔は、どこか薄かった


あなた
 ( なん、で… ) 


そのとき扉が乱暴に開く


リヴァイ
 ハンジ、報告書—— 
リヴァイ
 …何やってる 
ハンジ
 ちょうど休憩! 
リヴァイ
 それを休憩とは言わねぇ 
あなた
 兵長、お疲れ様です 
リヴァイ
 …ああ 


リヴァイの視線がハンジで止まる


リヴァイ
 …目の下、ひでぇな 
ハンジ
 研究の勲章だよ! 
リヴァイ
 死にかけのな 



あなた
 ( あれ、 ) 
あなた
 ( 兵長、気づいてる…? ) 
リヴァイ
 あなたの名字、先に戻れ 
あなた
 え? 
ハンジ
 ちょ、リヴァイ? 
リヴァイ
 話がある 
あなた
 …わかりました 


研究室を出る直前、ハンジと目が合う


ハンジ
 ごめんね 
あなた
 大丈夫です! 



でもその「大丈夫」が、


誰のための言葉だったのか分からなかった。




廊下を歩きながら胸の奥がざわつく


あなた
 ( ハンジさんは辛い ) 
あなた
 ( 私より、ずっと—— ) 


そうやって


比べて、下げて、飲み込むのが癖になっていた



遠くから聞こえる


リヴァイとハンジの声


リヴァイ
 …無茶するな 
ハンジ
 心配してくれてる? 笑 
リヴァイ
 当たり前だ、 



その言葉に


胸が少しだけ痛んだ。









あなた
 ( …私が心配する必要、ないよね ) 





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