思えば、私の幸せは " あの時 " に終わってしまったのかもしれない。
否、終わったのではなく、幸せなど感じてはいけないのだ。
だって、私にはその資格がないんだから。
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ある日、姉さんたちが1人の少女を連れてきた。
泥だらけで髪もボサボサ、身体中痣だらけで見るに堪えなかった。
その子...カナヲは私も無口だと言われていたけど、私以上に無口な子だった。
でも、年もほとんど変わらなかったし、性格も似ていて、おしゃべりをするなどということはあまりなかったけど、自然と一緒にいるようになった。
私には父さんと母さんと過ごした記憶が全くない。
" あの日 " のショックから忘れてしまったのだろうと私がいないところで2人がそう話していた。
でも、私には姉さんたちがいるし、カナヲだっている。
血は繋がっていなくたってもちろんカナヲも、アオイも、すみ、なほ、きよだって私の家族だった。
ずっとこの幸せが続くと思っていた。
思っていたのに、その幸せを壊したのは私だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!