私に声を掛けて来た三人組が廊下にいたことには気付いていた。下のあちらこちらで響いていた彼ら三人に向けて発せられる黄色い声から昼休み一緒に過ごすための権利をゲットすべく血眼になって争っている女子たちの戦いにも気付いていた。だが、不必要な諍いに巻き込まれたくなくて、静かに通り過ぎようとしていたにも関わらず、一番能天気且つ声が通ることで有名な喜多くんに呼び止められてしまった瞬間、私の計画は終了したと言っても過言ではないだろう。
バラエティーに富んだ実に多くの可愛い女子たちから声を掛けられていたにも関わらず、三人のターゲットが私に向かう。とはいえ、ずっと激しい攻防戦を繰り広げていた中、後から降って湧き出た存在のくせに三人の興味を掻っ攫う状況になれば、周りが面白くないと感じる気持ちも分からないではない。なかなか女子たちの誘いに乗らないと有名な三人が揃いも揃って愛想よく声を掛ける相手に嫌悪感を抱きたくなる流れが理解できないほど、お子様でもない。だが、私は売店からの帰りに偶然通りかかっただけで、話しかけて来たのはあくまであの三人!
それにも関わらず、私だけネチネチと聞こえよがしに「あの男好き」だの「媚び売り上手」だの「逆ハーの真似事してるつもり」だの嫌味を言われるのは面白くはない。
元々、派手な見た目をしているが故に昔から敵視してくる人は多かった。面倒ごとを嫌う私の意思とは無関係に一方的に悪評を吹聴される状況もある意味、慣れて来た。
だが、わざわざ要らぬ諍いを巻き起こすつもりは更々ない。とはいえ、私の意思など無視して一方的に敵視する相手側ばかり忖度する気もない。ならば、ここで選ぶ選択肢は一つだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。