春に彼等に出会えて良かった。そうでなければ僕は、一歩を踏み出さなかった。
夏に彼女に出会えて良かった。そうでなければ僕は、寂しい人間の侭だった。
秋に彼に出会えて良かった。そうでなければ僕は、這(は)い上がる力も無い侭潰れていた。
冬に彼女に出会えて良かった。そうでなければ僕は、本当の強さを知らないでいた。
大っ嫌いな生徒会。でも今は――あの男にまで感謝してしまう程大好きだって言える。
それは全て彼の……彼等のお陰なんだ。
手に持った本らしき物を見ていた長いストレートヘアを片三つ編みにした美女が笑みを浮かべる。
そんな彼女に声を掛ける緩くウェーブの掛かった髪を垂らした美女が居た。
ウェーブの女性は照れ臭そうに、しかし嬉しそうに頷く。
ウェーブの女性がそう呟いた時、離れた所から男性の声がした。
ウェーブの女性が嬉しそうに応じる。
片三つ編みの女性はそんな彼女を見て同じように喜びを感じた。
そしてそんな彼女を呼ぶ男性の声もする。
頷いた彼女は照れ笑いを浮かべながら声の方に駆けて行く。
そう言って彼女が向かった先には車があり、そこには現在教師として彼女等にとって思い入れの深い学園に居る跳ねた髪の男性とお団子ヘアの女性の姿もあった。
そんな彼等の様子を観察しながら同じように頷いた片三つ編みの女性は1人物思いに耽る。
そして彼女は決断していた。
――”生徒会”に干渉する事を。
彼女は気付いていた。
自分の性格こそ――
自分の立場こそ――
その役割にピッタリだと言う事に。
しかし彼女は気付いてなかった。
『彼』がそんな彼女に気付き、心配そうに見つめていると言う事に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!