ぐさおさんがそう声を掛けてくれたのは、入学式の翌日。
メテヲ____天羽 流星は、彼女の不思議そうな表情を見ただけで心臓が跳ねる。
メテヲが早く来るのは、勉強するためにぐさおさんがいつも早くに教室に居るから。メテヲさえ早くこれば、毎朝のように2人になることが出来る。
今年同じクラスになれたのは、本当に奇跡だと思う。
ぐさおさんは戸惑ったように瞳を彷徨わせ、何か言おうと意味も無く口を開け閉めさせる。
頬を赤く染めた彼女を不覚にも「可愛い」と思ってしまい、自分に頬の赤さが伝染してしまわないよう、必死にポーカーフェイスを保つ。
いつからだろう。こんなにもぐさおさんのことを愛おしく思ってしまうようになったのは。
____それと同時に、胸が苦しくなってしまうのは。
本当は全部分かっている。何もかもがどうでも良くなってしまう程優しい瞳の先に、メテヲが居ないのも。
メテヲと関わって居る時、別の人の事を考えているのも。
全部全部、分かりきっている。
さっき「同じクラスになれたのは奇跡だ」なんて思っていたけれど、これじゃあ奇跡の無駄遣いだ。
心配そうな表情でこちらを見るぐさおさんに、メテヲは慌てて笑顔を作った。
その言葉を合図に、窓際の隅っこの席へと向かう。
・・・・・・ぐさおさんにまで心配かけて、申し訳無いな。
どうしても重なってしまう〝あの姿〟を、メテヲは未だに振り払えずにいる。
口から零れ出た言葉は本心なのか、はたまたこの雰囲気にノリで言ってしまっただけなのか。
その真相は、もはや神さえ知らないだろう。
突然背後から聞こえてきた声の主は、いつもの笑顔で私の前にやって来る。
っていうかさっきまで、レイラーさんと仲良く話してたんじゃ・・・・・・?
見るとレイラーさんは、iemonさんと雑談しているようだった。
不意打ちって、すごくずるいと思う。自分が何も気にしてないからって____。
____私、今なんて? 別に私、レイマリさんの事何とも思ってない、よね?
うん、絶対にそう。遅刻魔でちょっと不良の雰囲気もあるレイマリさんの事に、〝あの感情〟を持っているだなんて____!
向こうからすれば突拍子も無い言葉の叫びに、レイマリさんは全く同じ声量で返してきた。流石レイマリさん・・・・・・。
私、さっきから「大丈夫」しか言って無いな。
けれどどこか、この何気ない会話に安心できるような気がして。
思っていたよりも大きく膨れていたその想いに、嫌でも気付いてしまう自分が居た。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。