歌が聞こえた。この戦場で。
それは少女の声だった。
確かに、船が浮かぶ海は荒れ、空も黒かった。
戦争に不相応な赤く美しい衣を着て、ゆっくりと舞う。
少女は、笑っていた。
確かに、幼く小さな女の手は震えていた。
確かに、大きな瞳を持つ目から出た雫は海に深く沈んでいった。
涙を落とすのは誰のためか。
剣、この言葉に男は気持ちが揺らぐ。
ここは戦場だ。兵士として、人を斬り続けなければならない。
しかし、手に、剣に、力が入らない。
少女は男の前でくるくると回り続ける。
不安定な船の上で。
それは戦勝祝いにでもきた遊女のように。
男は少女に近づく。
しかし少女は回り、男は少女を掴めない。手が宙を舞う。
空が晴れていく。天使のはしごが見えた。
船を揺らす風が止んだ。
男の瞳は眩しい光に照らされ、銀に光る。
少女は穏やかに止まり、男を目で捉える。
男は尋ねる。目には銀の光を宿したまま。
少女は微笑む。
その瞬間、男の首が飛んだ。きれいな肉の断面を見せ、赤い弧を描きながら。
男の目に最後に映ったのは、太陽の光か、刀の銀か。
船の上で止まった少女は隠していた葉を素早く振るった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。