〈mementomori side〉
シェアハウスをしている家の内の一室、村長室。
雀がさえずり鴉が鳴く清い朝。
数日前とは打って変わって涼しく、
それに合う爽やかな秋空が外に広がる中。
ゲーミングチェアに座り一人、考え込んでいた。
その内容は、というと____
…なんとも、物騒なことだった。
それもそのはず、数日前私は自分の誕生日……ということにかこつけて、一部の村民達にパイ投げをした。
その応酬に震えているのだ。まあそこまでじゃないけど。
最終的に、あの日はLatteさんに服のクリーニング代を請求され、レイマリさんのレポートを手伝い、ひなにいさんに指示された箇所の掃除を済ませるだけで終わった。
…そう、それだけなのだ。
あまりにも、軽すぎる。うちの村民がそんな優しいわけがない。天地がひっくり返ろうとありえない。
なんなら途中から菓子さんも掃除を手伝ってくれたし、クリーニング代を少しではあるが肩代わりしてくれた。
ぐさおさんもパソコンの修理費を払わなくていいと言ってくれた。結局パソコンは壊れていなかったらしい。
明らかな異常。こんなのあるわけがない。
今日はめめ村4周年。
きっと今日、その仕返しをされるに違いない。
そう考え、朝からこうも頭を悩ませているのだ。
この部屋に侵入させなければ、
ひとまずは安心できるだろう。
シェアハウスするための家を選んでいた頃の私に感謝しつつ、鍵を携え、扉の前へと歩いていく。
…扉に掛けているカレンダーに、そこで気づいた。
『9/20 ゼンゼロ 事務所午後2時』
終わった。
そうだった、今日は案件の打ち合わせ日。
しかも最悪なことに、珍しく今回はわざわざ事務所に行かなければならないものだった。
覚悟を決め、渋々と着る服を選び始めた。
今はもう昼の12時なのだから。
…ああいや、もちろんまだ朝ですけどね。
決して寝坊したわけではないんですけど。
うん、明らかに怪しい。
絶対パイ作ってるじゃないですか。
まあまだ朝っぱらから顔面パイされなくてよかったですけど…あっいや帰ってきたら顔面パイもそれはそれで嫌ですね
…ここで激辛とか出される可能性もあるか…?
これはどうするのが正解だ…?
いっそ帰らないっていうのは…打ち合わせって言っちゃったし無理か、やらかした。
だとしたら、正解は…
たぶん、これ。
うちには健康的な村民も意外といるし、眠くなって明日にしよう、みたいな流れが生まれる可能性もある!!
この反応は…どっちだ!?
いや、まあここで考えたとて後の祭りですね。
もう覚悟は決めましたし。
ガチャッ
…なるほど、私殺されるかもしれない。
流石にそこまではいかないと信じたいけど。
メテヲさんになんか作らせるのはやばいんですよ?一歩間違えたら大爆破ですよわかってんですか?
ガチャッ
大きな荷物…確実にまずい。
いよいよまじで帰りたくなくなってきた。
…遅くなるって言ったの、失敗だったか。
打ち合わせも終わり、夜9時。
実際に打ち合わせが終わった5時からできるだけ時間を潰してきたものの、流石に限界となり。
現在家の前、絶望を胸に佇んでいる。
ドアに耳を当ててみるも、中の様子はわからない。
…さて、どうするか。
流石にビジホ行くのはまずいし、そもそもそんなお金はない。みぞれさんに「帰る」って言っちゃったし。
仕方ない、もう頑張るしかない。
全力ガードすればなんとかなるかもしれないし!!眠気とかで相手が弱体化してる可能性もある!!
…よし、覚悟は決めた!!
ガチャッ
意気込んで開けた先は、真っ暗だった。
電気がついてない。
…もしかして、既に寝てた?
だとしたら申し訳ないことをしましたかね。
そう思いつつ、リビングの扉を開ける。
ガチャッ
パーンパ-ンパーーン!!!!!!!!!!!!
タッ
全力でキッチン…
…の奥にある階段を昇り、自室に籠る。
最悪だ、絶対にバレたくなかったのに。
菓子さんまじで許さない絶対。
…でも、まあ…………
戻ろう。感謝を伝えに。
Fin.
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。