〈iemon side〉
…貧乏揺すりが止められない。
それもそのはず、今日は一年越しに
自分の恋人と会える日なのだ。
一年前のあの日が懐かしい。
その後軽い説明をもらい、更にそれから一年…
よりもちょっとだけ早いある日のこと。
古ぼけた郵便受けに届いたのは、
銀色の小綺麗な招待状だった。
『23時にパーティーをする城が開きます』
『バスケットは忘れずに』
『ドレスコードも忘れないで』
内容はそんな感じ。ちゃんと説明を聞いて
よかったと心底思った瞬間だった。
そう慌てるめめさんを力いっぱい抱き締める。
腕の中、驚きながらも受け入れてくれる
彼女がなによりも愛おしい。
言葉と共に、勢いよく引き剥がされた。
なんとも楽しそうな笑顔をしている。
急いで頷いて、差し出された手をとる。
その瞬間、目の前が夜空に満たされる。
わけもわからないまま、手を引かれるへと身を預け、抜けていく力に流されて目を閉じた。
そう言われ慌てて周りを見る。
髑髏のついた全身鏡、ダークブラウンの壁に木製の洒落た机、深い青色のカーペット。
成る程、言われてみればめめさんらしい部屋だ。
いつの間にかめめさんは全身鏡の前まで移動しており、鏡の向こう側をリボン片手に覗き込んでいる。
去年にも見ていた緑色のリボン。
なんとなく、安心感がある。
そしてさっきは気づかなかったが、めめさんの近くに頭蓋骨が浮いてる。誰の骨なのか、結構怖い。
楽しそうに笑いながら、
もう一度手を差し出された。
…なんとなく、恋人繋ぎにしてみた。
…困惑しつつも、受け入れてくれた。
うっすら顔が赤いのは
チークというやつだろうか。
そう考えていると、強く右手を引っ張られた。
そのままドアの方へと駆け出していく。
置いてかれないようにと俺も慌てて足を動かす。
レンガの家々が見える窓の外からは、さっきまで静かだった街がざわめきだしているのが聞こえた。
最初に出た感想が、それだった。
翼が生えたなにかが空を飛び、箒に乗ったなにかが煙突にぶつかり、角の生えたなにかが目の前を元気よく横切った。
全員が片手に洒落たバスケットを携え、お決まりの「トリック・オア・トリート」というフレーズを交わしている。
おまけにお菓子の甘い香りまでするときた。
…俺のいた世界では、
まず見ないであろう光景だった。
「つまんない」にツッコミを入れる間もないまま、既にターゲットを移した彼。
そしてターゲットにされたであろう彼女、めめさんは…なぜか、楽しそうな笑みを浮かべていた。
彼が手元に怪しげな光を宿らせる。
その手の向かう先は、当然めめさん。
瞬間、彼女が消えた。
慌てて周りを見るも、彼女の姿はどこにもない。
再度現れた彼女は、彼のバスケットを取っていた。
俺、混乱。彼も驚いていたようだった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。