第73話

ハ/ロ/ー/マ/イ/ト/リ/ー/ト
206
2025/10/31 14:00 更新
iemon
…ほぼペンキなくなっちゃいましたね
めめんともり
ですね、6缶もあったのが嘘のよう…まだ家にはあるはずですし、取ってきます?
iemon
いいですね!行きましょう…
メテヲ
はぁいそこの輩達ストーーップ!!
iemon
えっ
めめんともり
あら
メテヲ
ちょっとストップストップペンキ構えないで!!一旦トリック・オア・トリート禁止ね!
めめんともり
…あれメテヲさん!?
これはまた久方ぶりですね…
メテヲ
今気づくんかい…久しぶり~めめさん
iemon
…えーっと…?
メテヲ
あ、iemonさん初めまして~…だよね?一応ここらの管理を任されてる天使、メテヲだよ~
めめんともり
と、自称してる悪魔ですね。
騙されちゃ駄目ですよiemonさん
iemon
あっはい、おけです
メテヲ
順応早くなってない!?天使に向かって失礼な!
…なんて話をしてる場合じゃなくてね!?
めめんともり
そういえばなんか言ってましたね、
なんか用ですか?
メテヲ
扱いの差…まあいっか。用ってほどでもないんだけどね、一旦ペンキぶちまけるのをストップ要請しにきたよ
めめんともり
え?なに、冗談にしてもつまらないですよ?禁止事項とか今まであってないようなものだったじゃないですか
メテヲ
それがガチなんだよね~
メテヲ
…ほら、時間見てみ?
iemon
あ、もう少しで23時ですね
メテヲ
そそ、んでこれからたくさんの輩が移動することになるだろうから、ペンキでこけてドミノ倒しみたいにならないように対策しとこうと思ってね
めめんともり
あー、確かに…一旦控えますか
iemon
ですね、事故とかになったら大変ですし
メテヲ
うん、物わかりがいい!
良識があるタイプで助かるよ
メテヲ
…それじゃ、ハロウィン楽しんでね~!
ばいばーい!!
めめんともり
さよなら~!
iemon
ありがとうございましたー!
メテヲ
あいあい、鬼とかに食われないようにね!

そう言うとメテヲさんは黒い翼を広げ、
凄まじい速さで華麗に空へと飛んでいった。


…あれ、俺自己紹介とかしたっけか…?
レイラー
ししょー!!
めめんともり
あら、レイラーさん!
レイラー
んふ、こんな時間にししょーと会えるなんて…今日は本当に特別な日ですねえ
めめんともり
全く、夜更かしは程々にしてくださいね?
レイラー
めめさんだって!受け取ったんでしょう?銀色の小綺麗な招待状…
めめんともり
ええまあ、今年はパートナーがいるのでね
レイラー
んふ…そちらが噂のiemonさんですか?
iemon
…え、噂?俺噂されてるんですか?
レイラー
ししょーからたくさん話聞いてますからね。話の通りまともそうで安心です…
iemon
あ、ありがとうございます…?
俺iemonです、よろしくです
レイラー
…あ、名乗ってませんでしたね…。
キョンシーのレイラーです。あんまり覇気のある話し方はできませんが、どうかご容赦くださいね
iemon
あ、いえ…俺も同じようなもんなんで…
レイラー
んふ…そんな輩でも、苦い思いもしなくていいしさびしい暗がりにいなくてもいいのが今日ですから。もう城も開いてますしね…
めめんともり
あ、そう城!今どんな感じかわかります?
レイラー
ん、そうですね…もうほぼ全ての窓から光がこぼれて繋がってますから、ここらの家に住んでる輩はみんな行ってると思いますよ
iemon
…要するにもうだいぶ混んでると
レイラー
ま、口直しの代わりにいいかと~
めめんともり
ですね、一緒に行きます?
レイラー
いえ、私はちょっと行くとこあるので~…存分にいちゃついててください、では!
タタタッ…










彼女の足はかなり速く、
あっという間に姿は見えなくなった。

今あるのは、好奇心と僅かな理性と…
もう何度目かわからない、緊張感だけだ。
めめんともり
……手…
iemon
え?
めめんともり
途中で離れちゃった手、
繋ぎ直さないんですか
iemon
何度でも繋ぎ直すに決まってるでしょう
めめんともり
…即答なんですね
iemon
そんな可愛いこと言われたら当然です、
言われなくても即答しますけど
めめんともり
…そういうとこ!!よくないですよ!!!
iemon
えっ…じゃあ繋ぐのやめます?
めめんともり
ぅぐ………いや、このまんまが…いいです…
うっわ可愛い。世界一可愛い。

…一年に一度なんて言わずに、
ずっとこのままいられたらいいのに。
めめんともり
も、もう行きますよ!!!ほら!!!
iemon
ととっ…行きましょうかw

…少し、鼓膜に響いた。
それでも、それすらも町のざわめきが隠した。

普段ならうるさいと思っていたかもしれないが、今はこの騒がしさが不思議と愛おしく感じる。

その原因はさっきからずっと聞こえるあのフレーズトリック・オア・トリートなのか、俺の恋人が隣にいるからなのか。


…そんなことも、めめさんとを繋いでいる右手を見るだけで脳から簡単に吹っ飛んでいく。
めめんともり
ほら早く!今は城で行進をやってるらしいですよ、私たちも参加しましょうよ!!
iemon
はい!
めめんともり
あっちあっち!!iemonさんはやく!!
iemon
はいはーい!…うわすごいですねこれ!
めめんともり
でしょう!ここのハロウィンの目玉で城から出発して町をぐるって回るんですよ!
めめんともり
…ほら、もっと前の方入りましょう!!
行進パレードの一番前へ!!
iemon
いいですね行きましょう!!
メテヲ
メテヲもい~れて!
レイラー
私も追いかけますね~
めめんともり
うわっどこから来たんですか!?
レイラー
あっちです
メテヲ
で、いれてくれるのくれないの?
iemon
いいですよ行きましょう!
めめんともり
まあいいでしょう、今この瞬間だけはみんな友達になって遊びましょう!!
メテヲ
わーい!はいペンキ!
おかわりしていーよ♪
めめんともり
まじですか!?なら一緒にトリック・オア・トリートしに行きましょう!!
メテヲ
行くぞ行くぞ行くぞ!!!
レイラー
ふーふー!
iemon
…ふはっ…w
楽しい!!!

なんでだろう、こんなにも楽しい。
普段は人に怯えて生活していたというのに、今なんてこのパレードに参加している全員が最高の友達に思えてくる。


…あまりにも贅沢すぎる時間だ。どんなに騒いでも叱られないし、どんなに笑っても冷笑されることはない。

今日一日色んなお菓子を貪ってきたけれど、俺にとっては今この時間がなによりも甘くて、幸せだ。



朝日が昇ればおわってしまう、この時間。
まるで夢の中のような世界。


…だからこそ、満月がこの世界を照らしてくれている間だけは、思いっきり楽しもう。
iemon
…もっと前にも行きましょう!!全員にトリック・オア・トリートしに行こう!!
めめんともり
ええ!
めめんともり
…ふー、楽しかったですねえ…!
もうこの街全体ペンキだらけですよ!w
iemon
ですね、こんなの絶対俺のいるとこではできないから…なんかすごい楽しいです
めめんともり
ふふ…そう言ってくれると本当に嬉しいです

うごめく街を眺め、高台でお菓子を食べる。

なんとも幸せなひとときだ。
もっとも、今日はずっと幸せなんだけど。
iemon
繋いだ右手を見て、思う。

これが終わったら会えるのは一年後。
このままのんびりして終わっていいのか…?












…そういえば、城の中には結局入らなかったな。



















iemon
…めめさん
めめんともり
…iemonさん、たぶん私たち今
同じことを考えてると思いますよ
iemon
…だったら、行く場所は…
めめんともり
…当然、










2人
城の中!!
めめんともり
そりゃっ!!
iemon
よい…しょっ!!

バシャン、バシャン!!

きらびやかだった城の中が、カラフルなペンキによって新たな彩りを足されていく。

なんだかその光景が、俺とめめさんの繋がりを証明してくれているようで。自然と笑みがこぼれていく。


ワガママ放題、やりたい放題。

町の喧騒すらも頭の中から旅立って、今聞こえるのはめめさんの声とペンキがぶちまけられる音だけ。


こんなこと、絶対に忘れるわけがない。

今日のように綺麗な月の光が降るころ、何度でもまた思い出すんだろう。なんて最高なんだろう。
めめんともり
ふふ…あはははっ!w すごいですよiemonさん、こんなお城今まで見たことないです!!
iemon
俺もですよ!!カラフルで眩しくて、
自然と目に焼き付きそうです!!
めめんともり
私達最高に贅沢なことしてますね!
iemon
ですね!
ペンキにまみれて、笑う。

だんだんと月が沈んでいく。

このお菓子のように甘い時間も、
そろそろ味わうことができなくなるようだ。

めめんともり
…また来年!!!
ぜっっったいに会いましょうね!!!
iemon
当然です!絶対に、また!!

繋いでいる右手を更に強く握って、言葉を吐く。

綺麗な星達に照らされて笑う彼女が、
この世のなによりも綺麗に見えた。


ああ、幸せだ______。



そう、思ったときだった。



iemon
うわっ!?!?
めめんともり
えっ、な,なに!?なんですこれ!?!?
ぐらぐらと足元が揺れた。

慌てて辺りを見渡すと、床の一部が手の形に盛り上がっていることに気づく。
メテヲ
じっとしてな?
iemon
え、メテヲさ____
めめんともり
…のわっ!?!?

さっき盛り上がっていた床から手が出てきて、手に乗せた俺とめめさんを、腕を伸ばして城の外へと運んでいく。

でも危ないとは全く思えない。

そのくらいに丁寧に…
まるで、客人を送り届けるかのように。
メテヲ
それそのまま家まで運んでくれるから!!
気を付けて帰ってねーー!!!
レイラー
またどこかでー…!!
iemon
あ、ありがとうございましたー!!!

感謝を伝える間にも、腕はどんどん伸びていく。

…本当に、大丈夫なのか…?
めめんともり
…これ、私がiemonさん達のいる方へ
行くときに使う道です!
iemon
え?
めめんともり
私もわからないことだらけなんですけど…でも、たぶん大丈夫だと思いますよ!
iemon
…だったら安心ですね
めめんともり
ふふ、信頼していただけてるようでなにより!
めめんともり
それじゃ、せっかくですし…
お菓子でも食べながら帰りましょうか
iemon
いいですね、なに食べます?
めめんともり
私キャンディーもらいます!
iemon
じゃ、俺はチョコもらいますねー
iemon
…こんなにあるなら、
いくら食べても減らなそうですね
めめんともり
ですね、帰るまでになくなったりはしなさそうでよかったです!





iemon
…それじゃ、のんびりお話でもします?
めめんともり
そうしましょうか!













…まだ、夜明けまでには時間がある。

その間に沈黙が訪れるか、なんて…
言わなくてもわかることだろう。


満天の星空を見て、そんなことを考えた。









さて、なにから話をしようか。
                    Fin.
ご本家様

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