そう言うとメテヲさんは黒い翼を広げ、
凄まじい速さで華麗に空へと飛んでいった。
…あれ、俺自己紹介とかしたっけか…?
タタタッ…
彼女の足はかなり速く、
あっという間に姿は見えなくなった。
今あるのは、好奇心と僅かな理性と…
もう何度目かわからない、緊張感だけだ。
うっわ可愛い。世界一可愛い。
…一年に一度なんて言わずに、
ずっとこのままいられたらいいのに。
…少し、鼓膜に響いた。
それでも、それすらも町のざわめきが隠した。
普段ならうるさいと思っていたかもしれないが、今はこの騒がしさが不思議と愛おしく感じる。
その原因はさっきからずっと聞こえるあのフレーズなのか、俺の恋人が隣にいるからなのか。
…そんなことも、めめさんとを繋いでいる右手を見るだけで脳から簡単に吹っ飛んでいく。
楽しい!!!
なんでだろう、こんなにも楽しい。
普段は人に怯えて生活していたというのに、今なんてこのパレードに参加している全員が最高の友達に思えてくる。
…あまりにも贅沢すぎる時間だ。どんなに騒いでも叱られないし、どんなに笑っても冷笑されることはない。
今日一日色んなお菓子を貪ってきたけれど、俺にとっては今この時間がなによりも甘くて、幸せだ。
朝日が昇ればおわってしまう、この時間。
まるで夢の中のような世界。
…だからこそ、満月がこの世界を照らしてくれている間だけは、思いっきり楽しもう。
うごめく街を眺め、高台でお菓子を食べる。
なんとも幸せなひとときだ。
もっとも、今日はずっと幸せなんだけど。
繋いだ右手を見て、思う。
これが終わったら会えるのは一年後。
このままのんびりして終わっていいのか…?
…そういえば、城の中には結局入らなかったな。
バシャン、バシャン!!
きらびやかだった城の中が、カラフルなペンキによって新たな彩りを足されていく。
なんだかその光景が、俺とめめさんの繋がりを証明してくれているようで。自然と笑みがこぼれていく。
ワガママ放題、やりたい放題。
町の喧騒すらも頭の中から旅立って、今聞こえるのはめめさんの声とペンキがぶちまけられる音だけ。
こんなこと、絶対に忘れるわけがない。
今日のように綺麗な月の光が降るころ、何度でもまた思い出すんだろう。なんて最高なんだろう。
ペンキにまみれて、笑う。
だんだんと月が沈んでいく。
このお菓子のように甘い時間も、
そろそろ味わうことができなくなるようだ。
繋いでいる右手を更に強く握って、言葉を吐く。
綺麗な星達に照らされて笑う彼女が、
この世のなによりも綺麗に見えた。
ああ、幸せだ______。
そう、思ったときだった。
ぐらぐらと足元が揺れた。
慌てて辺りを見渡すと、床の一部が手の形に盛り上がっていることに気づく。
さっき盛り上がっていた床から手が出てきて、手に乗せた俺とめめさんを、腕を伸ばして城の外へと運んでいく。
でも危ないとは全く思えない。
そのくらいに丁寧に…
まるで、客人を送り届けるかのように。
感謝を伝える間にも、腕はどんどん伸びていく。
…本当に、大丈夫なのか…?
…まだ、夜明けまでには時間がある。
その間に沈黙が訪れるか、なんて…
言わなくてもわかることだろう。
満天の星空を見て、そんなことを考えた。
さて、なにから話をしようか。
Fin.
ご本家様
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。