気づいたら、そんな言葉が出ていた。
グラスを持ったまま、少しだけ視線を逸らす。
言ったあとで、ちょっと恥ずかしくなる。
柔太朗が笑う。
会計を済ませて、店を出る。
並んで歩く。
さっきより自然にいられる。
その一言に、少しだけ足が止まりそうになる。
平然を装って返すのがやっと。
夜道は思ったより人も少なくて、静かだった。
そのとき、
ふと、腕が触れた。
反射的にそう言って、少しだけ距離を取る。
でも、
すぐに、また触れる。
さっきより、ほんの少しだけ長く。
あれ。
今のわざとじゃないよね。
そう思った瞬間、
柔太朗の手が少しだけ動いた。
指先だけが、そっと触れる。
そのまま、
軽く、引っかかるみたいに絡む。
声が少しだけ小さくなる。
ちゃんと繋ぐわけじゃない。
でも離れない。
そう言いながら、
指だけ、少し強く握られる。
そのまま、しばらく歩く。
家の近くまで来て、ようやく足が止まる。
そう言うと、
柔太朗の指が、ゆっくり離れる。
背を向けて歩き出してから、
さっきの感触が、指先に残ってるのに気づく。
あれなんだったの。
嫌じゃないどころか、もう少し続ければ良かったと思っている自分がいた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。