第10話

#10
221
2026/04/01 15:23 更新
あなた
.....なんか普通に楽しい
気づいたら、そんな言葉が出ていた。
 

グラスを持ったまま、少しだけ視線を逸らす。
 
言ったあとで、ちょっと恥ずかしくなる。
柔太朗
よかった
柔太朗が笑う。
柔太朗
そろそろ出る?
あなた
うん
会計を済ませて、店を出る。
並んで歩く。
 
さっきより自然にいられる。
 
柔太朗
今日さ
柔太朗
来て良かった
その一言に、少しだけ足が止まりそうになる。
あなた
そりゃどうも
平然を装って返すのがやっと。
柔太朗
何その返し
あなた
普通でしょ
夜道は思ったより人も少なくて、静かだった。
 
そのとき、



ふと、腕が触れた。
あなた
あ...ごめん
反射的にそう言って、少しだけ距離を取る。
でも、


すぐに、また触れる。
さっきより、ほんの少しだけ長く。




あれ。
今のわざとじゃないよね。


そう思った瞬間、
柔太朗の手が少しだけ動いた。


指先だけが、そっと触れる。
 


そのまま、
軽く、引っかかるみたいに絡む。
あなた
....酔ってる?
声が少しだけ小さくなる。
柔太朗
ううん
ちゃんと繋ぐわけじゃない。
でも離れない。
あなた
外なんですけど...
柔太朗
分かってる
そう言いながら、
 
 
指だけ、少し強く握られる。



そのまま、しばらく歩く。
家の近くまで来て、ようやく足が止まる。
 
あなた
ここで、
そう言うと、
 
柔太朗の指が、ゆっくり離れる。
柔太朗
....じゃあね
あなた
うん
背を向けて歩き出してから、
 
さっきの感触が、指先に残ってるのに気づく。
 
あれなんだったの。


嫌じゃないどころか、もう少し続ければ良かったと思っている自分がいた。

プリ小説オーディオドラマ